2020年10月7日、集団安全保障条約機構(CSTO)設立記念日に合わせて、ロシア外務省迎賓館において、「CSTO:戦略的発展の諸方針」と題する円卓会議(議長国ロシア)が開催されました。
 円卓会議には、CSTO加盟各国の代表のほか、CSTO事務局、CSTO統合参謀本部、CSTO議会総会の各代表が参加し、そのあと、CSTO外務大臣会議の議長を務めるロシア連邦外務大臣セルゲイ・ラヴロフによる歓迎を受けました。
 円卓会議のなかでは、外交、軍事および軍事技術協力、新しい脅威への対応などについて、CSTOのなかでの同盟的関係を今後さらに全方位的に発展させていくことを話し合いました。
 さらに、ロシア外務省迎賓館では、写真展「平和の守り手、国際平和維持活動におけるCSTO各国」が同時開催されました。


CSTO創設記念に合わせて実施される円卓会議の参加者への、ロシア連邦外務大臣セルゲイ・ラヴロフによる挨拶

 円卓会議「CSTO:戦略的発展の諸方針」の参加者の皆さんにご挨拶申し上げます。
 この会合は、集団安全保障条約機構が果たす役割とそれが占める地位、さらにはその将来像について、非公式な形で直接当事者による意見交換を行うための貴重な機会となります。今日、世界情勢が引き続き予断を許さず、またコロナウイルスの感染爆発など、CSTO加盟各国においても多くの国境を超えた問題と脅威に直面している状況の中で、このような機会はますます必要とされています。
 これらの課題を効果的に解決するためには、国連憲章をはじめとする国際法にのっとった解決策が必要であることはいうまでもありません。国連憲章にうたわれている国際協力の基本原則は、今日においてもその有効性を失っていません。それゆえ、第二次世界大戦の結果として構築された国際的仕組みを見直そうという動きに私たちは断固として抵抗し続ける必要がありますし、またその仕組みを、欧米を中心とする「ルールに基づいた世界秩序」に置き換えようとする試みにも抵抗しなくてはなりません。
 CSTOが、真に同盟的関係の模範を示し続けるということを確信しています。皆さんが実のある議論をされますよう祈念し、私からの挨拶とさせていただきます。

セルゲイ・ラヴロフ
2020年10月7日 モスクワ市


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アレクサンドル・パンキン、ロシア連邦外務副大臣

 同僚であり友人である皆さん
 10月7日は記念すべき日です。18年前のこの日、2002年、憲章と法的地位協定というCSTOの基礎となる文書に加盟各国はキシニョフで調印しました。
 今になって振り返りますと、CSTOは、安全保障に関わるすべての分野における行動を規定する、多岐にわたる法的基盤を有しており、国際的および地域的に権威のある組織として、多面的な組織に育っていると断言することができます。
 まず第一に、CSTOの発展のための主要な指針を定めた「2025年までのCSTO集団安全保障戦略」が実行に移されています。
 このなかで、共同行動をさらに完全なものとし、CSTO軍の体制を向上させ、テロ組織の無害化および壊滅など、さまざまな課題の遂行能力を高めるための施策がとられています。
 同時に、テロリズムや過激主義といったイデオロギーに対する対策においても、CSTO加盟各国による具体的な施策が定められています。禁止組織の統一リストの作成も進んでいます。
 CSTOはその対テロリスト課題の解決における新しいアプローチを模索するため、上海協力機構をはじめとするほかの地域統合組織の経験も参考にすることができるでしょう。シリアにおける「テロリズム・インターナショナル」との戦いが成功した一方、ロシアで禁止されているイスラム国の活動がアフガニスタンで活発化している状況であり、上海協力機構地域対テロ組織およびCIS対テロセンターとの実務的協力を強化しなくてはなりません。
 安全保障における課題と脅威に対応するため、史上初めてとなる、CSTO、CIS、SCO(上海協力機構)の防衛担当大臣による会合が開催されました。この会合は、9月にモスクワで開かれたものです。軍事協力における喫緊の課題について、非常に専門的な話し合いが行われ、参加した各組織が活動する空間における安全保障のためのアプローチが共通であり一体のものであることが確認されました。
 今日、私たちの集団的力の可能性をさらに押し広げるべき状況が生まれています。それは災害時における救助支援活動やさまざまな人道的任務の遂行といった分野です。危険な感染症の感染爆発への対応を含め、軍事医療分野における協力拡大を目指しています。
 私たちにとって、安全保障分野における協力は優先課題の一つであり、それはパートナー諸国においても同様であると深く確信しております。CSTOの加盟国すべてにとって利益となることです。これは私たちのポテンシャルとと共同行動のための貯金箱なのです。
 CSTOが、防衛力の強化とともに、国際舞台における共通の政治的利害を共同で推進する環境を整備したということも、非常に重要なことです。世界平和と安全保障の問題が議論される国連やOSCE、その他の国際的プラットフォームにおいて、私たちは共同歩調をとっています。
 もちろん、新しいコロナウイルスの感染爆発は、世界および私たち加盟国の空間を麻痺させ、深刻な試練となりましたが、CSTOが解決すべき新しい課題を照らし出しました。ここから教訓を引き出し、正しい結論を導かなくてはなりません。
 ロシアは感染症研究の分野においても、すべての関係各国との協力の準備があり、それはまず第一に、CSTOにおけるもっとも近い同盟諸国との協力です。支援と協力においては多くのことがすでに行われました。世界で初めてとなるワクチン「スプートニクV」がロシアで開発されたことを受け、プーチン大統領は国連総会での演説において、コロナウイルスワクチンの開発および製造を行っているすべての国および組織との協力を提案しました。
 国際社会にとって非常に重要なこのタイミングで、CSTO加盟各国は、感染爆発に対処するため世界のすべての場所で休戦を行うという国連事務総長の呼びかけを無条件に支持しています。
 加盟各国においては、経済、貿易、社会保障すべてに損害を与えたこの感染症との戦いのために、政治的思惑や経済的利害を棚上げして、グローバルな協力が必要不可欠であるとの一致した理解があります。この問題は、いまあるすべてのツール、メカニズム、可能性を動員して克服すべき問題です。
 今年は1941年~1945年の大祖国戦争および第二次世界大戦の勝利75周年であるということも見逃すことはできません。来るべき世代の自由とナチズムからの解放を目指して共に戦った私たち諸民族にとって、大きな意味を持つ重要な歴史的出来事です。私たち各国では、父、祖父たちの勇気ある行動、英雄的自己犠牲、銃後の労働者の我慢と忍耐の記憶を神聖なものとして顕彰しています。赤の広場での戦勝記念パレードに、CSTO全加盟国の儀仗隊が参加したことは象徴的なことです。
 もちろん、今日の安全保障のグローバル構造は大きな変化の最中にあります。伝統的な脅威と非伝統的な脅威が混じり合っています。テロリズム、過激主義、サイバー犯罪などの問題が先鋭化しています。地域紛争も絶えません。
 加盟各国の社会政治的状況を、諸外国は外からの力によって揺さぶろうとしています。これはベラルーシにおいてもそうです。私たちにとっては兄弟であるベラルーシの人々が直面した国内的な問題に乗じて、外国は外から、自らに有利な秩序をベラルーシの人々に押し付けようとしています。私たちの家であるソ連崩壊後の空間において、私たちの文化、社会、そして私たちの一体感と真っ向から対立するような秩序が押し付けられようとしているのです。
 ナゴルノカラバフ紛争は現在、かなりエスカレートしていますが、武力での解決はあり得ません。民間人の犠牲者が増えていることに深く遺憾の意を表明いたします。両国に対し、早急に休戦するよう呼びかけます。ロシアも全面的に、ナゴルノカラバフ問題が政治外交的手段によって解決されることを支援しています。ロシア、米国、フランスの大統領による共同声明に基づき、OSCEミンスク・グループの枠組みに沿って動いています。
 今回の円卓会議の目的は、将来を見通し、CSTOとして未来の環境に準備し、国際問題において積極的な役割を果たせるようにすることなのですから、将来に目を向けてみましょう。CSTOは生きた有機体であり、活発に発展し、柔軟に適応する有機体です。これは今後とも維持しなくてはなりません。加盟各国は常に修正を行い、協力範囲を拡大し、変化に応じて法的基盤も強化していく準備があります。変化が重要であり、このような組織には立ち止まることは許されません。
 指摘すべきは、CSTOに関心があり、原則を共有する国々との協力の道が開かれた点です。つまり、CSTOのオブザーバー国とパートナー国という制度が出来たことです。すでに関心を持っている国々との話し合いが始まっています。大切なのは、法的な手続きを完了させ、法的な根拠のある文書にのっとった形で潜在的なパートナーと交渉を行うことです。この手続きを完了させることを、議長国ロシアの優先課題として、今年初めにこの名誉ある役割を引き継いだ時に述べた通り、進めていきます。
 さらに重要な点は、CSTOが、大きな重要な仕事でありながらも、常に外から見えるとは限らない仕事をしていることです。加盟各国の行政機関、軍事組織、関心を持っているマスコミなどの当事者のみならず、幅広い層の人々に、この組織が安全保障と平和維持にどんなことをしているのかを知っていただきたいと思います。この組織は集団的組織であり、加盟国は完全に平等なる権利と可能性を有しており、どれだけ複雑で長期に渡ろうとも、課題達成のためにいかなる障害があろうとも、必ず全会一致でのみ決定を行う組織であるということを知っていただきたいと思います。
 そのためには、マスメディアのみならず、世論を形成する社会全般に対して、緊密な情報発信を行う必要があると考えています。この組織をもっと知ってもらわなくてはなりません。実際にはたくさんのことを行っているのですから、それを発信しなくてはなりません。それは、軍事や対テロ分野、外交における協力発展のために行っている仕事そのものにも勝るとも劣らない重要性をもつものです。CSTO記念日イベントの実施はまさにこの目的のためです。来年の議長国であるタジキスタンも、このイニシアティブを継続してくれることを期待しています。またこれは議長国の責任だけではありません。加盟国それぞれが、自らの環境、人々、方法に最適な形で、この仕事を行っていただければと思います。
 12月モスクワでは、集団安全保障会議が予定されています。充実した政治会合になると確信しています。私たち全員にとって、また一部の国にとってはことさら試練であった時期に議長国となったロシアとしての総決算のみならず、私たちがいま話し合っているその将来について、ともに見通すための会合にしたいと考えています。
 感染爆発による制限はありますが、プーチン大統領が定めた優先課題はやり切る所存です。同僚の皆様のご協力に感謝申し上げます。多くの文書の作成や将来のための調整作業のテンポを緩めてはいけません。世界の緊張は高まっており、地域レベルでの緊張も緩まる傾向を見せておりません。
 私たちの集団安全保障をいかに強化すべきか、私たちは知っています。ユーラシアにおける平和と安定の維持にCSTOが果たす役割は明白です。CSTOの外においても、より規模の大きい平和維持活動に参加していく予定です。熱っぽく聞こえるかもしれませんが、私たちが団結して、お互いを理解している限り、最も困難な課題でさえ、私たちは担っていくことができるのです。私たちがともに行動することは、CSTOの権威を、加盟各国の指導者および国民にとってのみならず、世界全体において高めていくでしょう。加盟各国の国際的地位は、それに伴って強化され、CSTOが平和と安全保障の分野において確実に貢献しているという確信がさらに高まっていくものと考えております。

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スタニスラフ・ザス CSTO事務総長

 皆さん、今日、集団安全保障条約機構は、効果的な国際的地域軍事政治機構として、次のような歩みを見せております。

ー必要となる法的な基盤が整備されたこと。
ー基本となる実務機関が創設され、それが活動し、機能するためのアルゴリズムが整備されたこと。
ー集団即応展開軍(KSOR)などの組織が編成されたこと。組織の訓練や維持のための体制が整ったこと。
ー外交およびその他の分野における共同歩調をとるための体制が整ったこと。例えば、現代の新しい脅威に対応するための対策を共同で行う常設の仕組みができたこと(「カナル作戦」「ニレガール作戦」「ナヨームニック作戦」)。

 CSTOは、国連をはじめとする国際機関によって、国際政治における主体であると認められています。すべては皆さんの多大なる努力の結果です。しかしこれで十分かといえば、決してそうではありません。

 現代情勢のなかで、集団安全保障体制を全面的に強化し、効果的なものとするため、CSTOのさらなる発展が求められています。戦略的発展の方向性を明確に見据えながら、前に進まなくてはなりません。

 その指針は、2025年までの集団安全保障戦略の中に一部は盛り込まれています。しかしその策定から5年間で、軍事政治的状況は変化しています。また、さらに先を見通すべき必要があることは言うまでもありません。

 そのような指針の一つとなるのが、外交活動の拡大、国際機関および関係各国との協力の強化です。

 その意味で、国連第75回総会の開会日に、国連とCSTOの協力に関する共同宣言の十周年を記念して、国連とCSTOの両事務総長による共同声明が発表されたことは喜ばしいことです。声明では、すべてのレベルで協力の規模をさらに拡大する意思が確認されました。

 国連およびOSCEのみならず、CISおよびSCOとも高いレベルでの協力が続いています。ご案内の通り、今年5月26日のCSTO外相会合には、CIS執行書記のC.N.レベジェフおよびSCO事務総長のV.I.ノロフが参加しています。

 CSTOの活動に他の国をパートナーおよびオブザーバーとして迎えることを可能にする、憲章第三修正議定書が加盟国によって早期に批准されることを期待しています。これによって、CSTOの国際的やり取りの幅が広がり、各国および各国際機関との協力をさらに質の高いレベルへと向上させることができるでしょう。
 
 CSTO軍のさらなる発展、その機動性と任務遂行能力の向上も必要です。これに関して最も重要な課題は、CSTO統合軍事システムを編成することであり、特に、各国の対空防衛システムをCSTO全体の統一システムとして統合することです。CSTO軍を物質的および技術的に維持するための法的整備を継続し、資金的な余裕も生み出さなくてはなりません。さらには、多民族的統合を目指すことになるでしょう。

 CSTOの平和維持活動の発展を継続することも重要です。今日、国連による活動において、CSTOから平和維持部隊を派遣するためのすべての前提条件がそろっています。

 軍事経済協力における有望な課題としては、CSTO加盟各国の防衛産業同士による多面的な協力を発展させることがあります。つまり、最新の防衛モデル、兵器、その他軍事用途の製品の共同開発および共同生産、さらには修理や整備を行うサービス網の構築を行うことです。

 現代の新しい脅威に効果的かつ体系的に対応するため、テロリズム、過激主義、麻薬の不法取引、不法移民の対策に関するCSTO加盟各国の能力強化も継続します。

 それに関連して最も将来性があると考えられるのは、今年5月のCSTO外相会合のなかで触れられた、CSTO、SCO、CISのそれぞれの枠内で実施されている対テロ活動を統合するという構想を、現実のものとして実現していくことです。

 また、人工知能や5Gシステムなど、最新の情報コミュニケーション技術を犯罪目的で悪用することによって生まれる新しい脅威を、予防的に早期発見するための分析作業についても、注力していかなくてはなりません。

 生物学的安全をめぐる問題についても考察が必要です。現在猛威をふるっているコロナウイルスの感染拡大は、国際、政治、社会経済、すべての活動のあらゆる面に否定的な影響を与えました。コロナウイルスもしくはさらに別の新しいウイルスの拡大は、長期間にわたって脅威であり続ける可能性があり、それはCSTOの領域であれ、国際社会全体であれ、違いはありません。

 最後に、CSTOの更なる発展にとって、十分な能力を私たちが持っているということを強調しておきたいと思います。発生する脅威に対して、CSTOはいつでも、十分な対応ができる状態にあり、また将来にわたってもそれは変わりません。

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アナトリー・シドロフ、CSTO統合本部長

 CSTOの集団安全保障をめぐる地域情勢は、複雑な状況にあります。その例として、ナゴルノカラバフにおける軍事紛争、ベラルーシおよびキルギスにおける国内情勢が挙げられます。また、私のたちの国々だけでなく世界中で広がっているコロナウイルスもこの状況に拍車をかけています。

 このような状況のなかで、CSTOの危機対応システムの準備を万全なものとし、すべての脅威に対して十分かつ効果的に集団安全保障の力と手段を発揮できるようにすることは極めて重要なことです。

 CSTOの発展の展望についての基本的考え方は、2016年、加盟国首脳らが決定した「2025年までのCSTO集団安全保障戦略」にまとめられています。政府間においては、その実現に向けた方策が計画されています。

 この結果を踏まえて、現在、「2021年から2025年までの集団安全保障条約機構加盟各国による軍事協力発展のための計画」の案が準備され、各国首脳による調印を行うべく最終段階にあります。
 計画においては、集団安全保障の強化に向けた組織的、技術的、実践的な方策について、包括的な協力を行うこととされています。

 2021年から2025年にかけての軍事協力の優先課題として、次の諸課題が挙げられます。
 -CSTO軍(集団軍)の装備の充実と、CSTO統合(共同)軍事システムの発展、およびそれらを活用した各任務の達成に向けた準備
 -CSTO軍(集団軍)の指揮組織のさらなる完成
 -CSTO加盟各国の軍事経済的および軍事技術的協力の発展

 集団安全保障の力と手段を発展させるのに最も重要なのは、CSTO KSORの戦闘能力をさらに強化することであり、それはつまり、全面支援部隊、最新かつ共通仕様の武装、兵器および特殊機器、指揮系統の充実を図ることです。

 CSTOの軍事面を強化するのに中心的役割を果たすのは、CSTO航空部隊の発展です。特に、前線(作戦戦術用)航空隊および陸軍航空隊の数、役割、位置づけが重要です。
 世界に紛争地域が数多く存在していることを考えれば、CSTOの軍事面での発展において、現在および近い将来、CSTO平和維持部隊の組織と構成を見直すことも重要であり、国連による承認に基づいた行動を行うことが必須となっています。
 CSTOの危機対応体制を効果的にするために同じく不可欠なのが、CSTOの新しい組織である危機対応センターの機能性を向上させることです。
 具体的にいえば、CSTO危機対応センターおよびセンターと協力する加盟国の行政組織における技術設備およびテクノロジーを充実させることです。

 これによって、次のことが可能になります。
 -集団安全保障対象地域における軍事政治的状況の監視、起きうる脅威の評価をより効果的に実施すること、
 -国家間での保護された情報連絡を完全に実現、導入すること、
 -危機(非常事態)が発生した際、集団安全保障体制の力と手段を展開するための準備にかかる時間を短縮すること、
 -CSTO軍(集団軍)の即応展開とその準備における指揮体制をより効果的にすること。

 集団的軍事力の構築という課題はCSTOのなかの軍事協力においても最も困難な課題であり、すべての加盟国の協力のみならず、CSTOの各組織による努力が求められる課題です。

セルゲイ・ポスペロフ、CSTO議会会議事務局長
 ザス事務総長、パンキン外務副大臣、円卓会議に参加されている皆さん、こんにちは!
 残念ながら、議員の皆さんは、現在の状況のなかでこの行事に参加することが叶いませんでした。CSTO各国議会の国際問題委員会議長による会合は延期となりましたが、近く開催されることを希望いたしますし、もちろん皆さんにもぜひご参加いただきたいと考えております。

 CSTO議会会議は、CSTO加盟各国の議員協力のための組織ですが、CSTOの枠内で作られた集団安全保障の仕組みを機能させ、発展させるために、立法府としてできることを考えることを優先課題としております。

 第一に、CSTOのさまざまな国際条約の批准手続きを各国で推進しております。加盟各国議会においては、いままでに立法府に持ち込まれた国際条約をすべて迅速に批准してきました。一方で現在、2018年11月8日に調印された4つの国際条約について、いまだすべての加盟国による批准手続きが完了しておりません。

 ですから、まだ国内での批准手続きを終えていない国々の外務省の代表者の皆様にお願いさせていただきたいことは、その4つの国際条約について、国内での批准手続きを迅速に進めていただきたいということです。
 CSTO議会会議が力を入れているもう一つのことは、発効した国際条約や規則について、それに伴う国内法の整備を推進することです。例えば、テロリスト組織の統一リストに関する法律や、KSORや平和維持部隊の機能を確保するための法律は大きな意味をもつものです。
 国内法をハーモナイズさせ、形式を整えていくために、議会会議では65のモデルとなる法令および提言を採択いたしました。CSTO加盟国の議会において法案を審議する際には、かならずCSTO議会会議による提言を考慮しなくてはならないことが決められています。同時に、問題もあります。例えば、COVID-19の感染拡大に関連して、先の定例会議において、感染症対策に関する立法が、CSTOの範疇に含まれるのかどうかという議論がありました。CSTO事務局による分析によれば、CSTO憲章が定める目的に矛盾するものではないという結論が出ています。
 法律のハーモナイゼーションをめぐっては、同様の問題が、経済分野および情報安全分野における法律において指摘できるほか、社会のデジタル化と人工知能の導入に伴う、集団安全保障への新しい脅威への対応をめぐっても問題があります。2021年から25年までのモデル立法案を作成しています。デジタル分野および経済安全保障の分野において、すでに加盟各国議会からの提案をいただいています。
 それに関連して、議会会議でも作業が活発化することが予想されます。この問題は安全保障に直接関係する問題であり、特に、テロリズムおよび組織犯罪の取り締まり、重要デジタル対象などリスク対象の保全に関係してきます。外務大臣会議およびCSTO事務局に対しては、議会会議がこの問題を検討していく際のご支援をお願いしたいと思います。
 国家安全保障および集団安全保障における電子プロセスの重要性に鑑み(経済、デジタル、電子環境といったものは、すでに地政学的利害の交錯する「戦場」とみなされていることはご案内の通りです)、CSTO加盟各国で実施される議会選挙および大統領選挙に、CSTO議会会議が国際監視団を派遣するという現在の慣行(担当行政庁からの招待に基づいて行われるものですが)を制度化する必要もあると考えています。
 集団安全保障条約機構の活動の目的(集団安全保障条約機構憲章第7条から第10条、およびCSTO議会会議を加盟国の議会同士の協力組織と規定している第11条)に基づいて、国際監視団を派遣して、加盟国で行われる選挙プロセスを監視すること(国際機関の法的主体性はその設立国によることを考慮しても)は、CSTO議会会議の自立的機能であることは疑いありません。
 CSTOに加盟していない国々の議員であっても、関心のある議員であれば誰でも、協力していきたいと考えておりますし、国際的な議員連盟との間でも協力関係を発展させることによって、友人の幅を拡大させていく所存です。議会会議では、オブザーバーやパートナーという仕組みをすでに運用しており、CSTOのレベルにおいても、自らのイニシアティブを発揮していきます。
 大祖国戦争における勝利75周年の今年、ファシズムの粉砕にソビエト連邦の諸国民が決定的な役割を果たしたという客観的な情報を発信する点において、私たちが一致して取り組んでいることは注目に値します。私たち共通の歴史における栄光のページを守り、ナチズムの復活を立法レベルで阻止していくという目的があります。私たちはヨーロッパ各国の議会に対する呼びかけを用意しました。すべての国々からではないにせよ、多くの国々から、正しい反応を得ることができると期待しています。

 議会会議は、CSTOの議会間協力の組織として、議長国が発表する優先課題の実現に協力してまいりました。
 議長国が設定する優先課題は、必ずしも具体的な実現時期を設定しているものばかりではありません。それらの多くは、現代的な展望に基づいたものであり、数年にわたって実現されるものです。その間、次の議長国による優先課題も出てきます。
 CSTOの議長国の外務省代表者としてのパンキン副外務大臣、そしてここにご臨席のすべての同僚の皆さんに置かれましては、そのような課題遂行のために、ぜひともご協力を賜れますようお願い申し上げます。

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キーワード:2025年までのCSTO集団安全保障戦略、共同歩調、平和維持活動

By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。