外交面では、トランプ政権は経済利益と反中国方針を基礎として、友好国との関係性を徹底的に再構築しようとした。米国はオバマ時代に締結した複数の多国間合意から離脱している。また、ユネスコ、WHO、国連人権理事会など米国のコントロールに十分に服していない国連機関が米国の利益を侵害していると指摘し、拠出金を凍結するとともにこれら機関の活動への参加を削減した。同時に、各国と貿易協定の再交渉を行い、米国側に有利な条件をメキシコ、カナダ、韓国、日本、そして中国にさえも飲ませることに成功している。米国は、中国との経済貿易協定の第一段階合意に署名したが、これはメディアによって「米中貿易戦争」と呼ばれることとなった中国への経済制裁圧力を強めた結果であった。

トランプ政権は、軍事費を30%以上増額したにも拘わらず、新たな軍事衝突を全く起こさなかったばかりか、中東派遣軍の削減を実行すらしている。そして、トランプの任期最終年である2021年には、アフガニスタン駐留米軍の完全撤退を決定した。トランプ政権に関するメディアの報道は、オバマのパブリック・イメージと反対であると同時に類似もしている。メディアは、オバマ時代と同様にトランプのあらゆる行動をネガティブに取り上げる傾向にあったが、結局すべての決定の責任は大統領一人に帰せられたのである。また、米大統領がSNSアカウントを保有し、自身の意見を非公式的に発信し、国民と直接連絡を取り、国内情勢について即時にコメントするなどといった、一種の政治革新とも言うべき前例の無い取組みがトランプという人物の人気を後押しした。トランプのSNSアカウントは凍結されたが、その際に彼のフォロワーは合わせて1億人を超えていた。

トランプ政権の特徴は総じて次のように言うことができよう。

  • ケインズ型アプローチに類似した輸入代替政策の推進と内政の中核としての米国企業の重視
  • 外交面では目に見える利益を追求、軍事圧力を使ったが、実際に軍事力を行使することは無かった
  • リーダーシップの重視
  • 二国間交渉及び協定を支持し、広範な多国間協力関係を放棄する傾向

ジョー・バイデン政権

バイデン政権の特徴は、新政権が早くも直面せざるを得なかった内政・外交における重大な危機的状況を分析することで最も明確に表れる。具体的な例は次の通りである。

米連邦議会議事堂襲撃事件の結果

ジョー・バイデン政権は、突如発生した国内政情不安の最中に発足した。米国社会は二つの陣営に分断された。バイデン支持者や政界・ビジネス界のエリートは、米連邦議会議事堂襲撃事件を総出で非難し、トランプとその支持者の通信手段をブロックした。他方、トランプ支持者は不正選挙を訴えるトランプ陣営の主張を信じ、トランプ大統領への不当な扱いに憤慨していた。この状況下で、バイデン政権は報道機関やSNSを運営するテックジャイアントの完全な支援の下、「民主主義を弱体化させる」トランプとその支持者にイデオロギー攻撃を仕掛け、議事堂襲撃事件とトランプ個人の役割に関する調査内容に対して大規模な社会的反響を喚起し、トランプを米国政治にとっての一種のペルソナ・ノン・グラータに仕立て上げることに成功し得たであろう。こうした対応は、民主主義を守る闘いというイデオロギー的手法に依拠し、闘いのリーダーとしてのバイデン像を作り出し、政治的潮流であるトランピズムへ深刻な打撃を与えた点で、既に述べたバイデン政権に関する二つの基礎的仮説と合致するであろう。

しかし実際には、バイデン政権は全く異なる道を選択したのだった。ホワイトハウスは、議事堂襲撃事件の調査からは距離を置き、本件の対応を議会及び法執行機関に主導させることとした。そして、バイデン大統領自身と政府当局者は、選挙の不正を明確に否定し、「民主主義への攻撃」という一般的な表現で事件を非難するだけに止めている。こうしたバイデン政権の消極的対応は、トランプが短期間の沈黙を経て即座に政界へ復帰することを許したのだった。トランプは、共和党の非公式リーダーとして、党のメンバーを一掃し始めた。このような経緯で、トランプを厳しく批判していたリズ・チェイニー下院議員は5月12日に共和党の党会議議長を解任されたのである。

By KokusaiSeikatsu

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