ロシアとの関係において、バイデン政権は新戦略兵器削減条約を延長するという前向きなスタートを切った。しかしながら、バイデンは3月17日のインタビューで、プーチン大統領について根拠の無い認識を示し、その前例の無い軽はずみな発言はロシアのみならず世界中から大顰蹙(ひんしゅく)を買った。この出来事からひと月弱となる4月13日、バイデンとプーチンによる電話会談が実施された。米国側から首脳会談実施の提案が出たほど議論は建設的に進められたが、そのたった2日後、ホワイトハウスはロシアに対し新たな経済制裁を科している。バイデンは演説の中で、アメリカはロシアとの衝突を望んでおらず、国際安全保障に対する責任をロシアと共有しているが、米国はロシアによってもたらされた損害に対しては「それ相応の」措置を取る意向であると述べている。この「共に協力して責任を負う意志はあるが、事実上は懲らしめてやる」という独特の立場を、バイデンは後々も先述の記者会見や議会演説などで貫き通すであろう。

米国は、独裁国家とみなす対トルコ関係においても矛盾した対応を取っている。バイデンは、エルドアン大統領との電話会談で両国首脳会談の実施を暫定合意した。しかしながら、この前向きな進展の翌日に、バイデンは1915年から1923年にかけて発生したアルメニア人大量殺害事件をジェノサイドと公式に認定するとの声明を発表したのだ。同殺害事件は未だ過去のものとなっておらず、現在もなお白熱した論争が行われており、今回米国が下した判断は、対トルコ関係における敵対的な歩みを進める一歩としか考えられない。また、NATOの同盟国である米国とトルコの間に更なる不調和をもたらしたのが、5月9日に生じたパレスチナとイスラエルの対立悪化である。この状況に対する両国の立場は異なり、米国はイスラエルを支持したのに対し、トルコはパレスチナを支持する意向を表明したのだった。

このように、ロシアやトルコとの関係における米国のスタンスは一貫性が無く、戦略的課題においては友好的な歩み寄りを宣言しながらも、他方では世論の目にも辛辣で病的な声明を発表し、制裁を強化するという有様だ。この矛盾は米新政権の無能さを露呈させているとみなすことができる。実際に、バイデン政権の方針は曖昧であり、2014年以降のオバマ政権のように、イデオロギー的に正当化された攻撃的態度も取れず、あるいは国内で醸成される敵対心を顧みずに、互恵的な利益をもたらす和解の道へ踏み出すこともできないという、どっち付かずの状態である。

中東及びアフガニスタンにおける米国の立場

バイデン政権は、中東政策においてトランプ政権とは方向性が極めて異なる複数の重要な歩みを進めることに成功した。米国は、サウジアラビア並びにUAEへの武器売却契約を一時的に凍結し、サウジアラビアによるイエメン武力衝突への加担を非難した。更に米国は、サウジアラビアのジャマル・カショギ記者の殺害を巡る調査報告書を公表することを明らかにした。報道によると、報告書はカショギ記者殺害事件におけるムハンマド・ビン・サルマン皇太子の中心的役割を示唆しているという。サウジアラビアに対する従来の友好的態度から方針を大転換し、関係性を冷却化させたことは、米国と伝統的な同盟関係を持つアラブ諸国とイスラエルの対立緩和に向けたトランプ前政権の努力効果を薄める可能性があるだろう。

By KokusaiSeikatsu

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