バイデン政権が二つの前政権と異なる主要な点は、リーダーシップ主義の完全なる欠如である。政府による意思決定の全ては、専門家との慎重な諮問を経た上での政権全体の合意事項とされており、民衆の目には大統領自身が改革や路線変更に対する単独責任を負っていないかのように映る。このような印象が形成されるのは、政府高官が記者会見に出席するのが定常化している中で、バイデン自身がジャーナリストと接する機会を設けるのは極めて稀であることが主な原因だ。しかもバイデンは、SNSで自身の支持者と直接的な交流をすることもない。バイデンのリーダーシップに関するもう一つの際立った特徴は、外交を犠牲にしてまで内政を重視する点である。バイデン政権は、国内改革に関しては野心的な計画を提示しつつも、外交面ではいかなる具体的な政策も打ち出しておらず、実際的な施策の中身はほぼ中途半端と言って良いだろう。

本論の出発点であるオバマ政治の「継承」とトランプ政治の全否定という二つの仮説を置く立場から見ると、バイデン政権の政治はオバマ・トランプ政治の奇妙な混成物であると言うことができる。即ち、民主主義を守り世界中の人々の人権を保障するという、2011年から2014年のオバマ政治を典型的に示すレトリックが、保護貿易主義的措置と露骨な反中意識にも適用されたというわけであり、これは結局のところ2017年から2020年のトランプ政権の政策を直接的に踏襲することに等しい。

以上を踏まえると、バイデン政権は二つの利益を追求していると結論付けることができよう。一つ目は自由世界のリーダー像を維持するために不可欠な世評獲得という利益であり、二つ目は対中競争と経済成長促進の必要性と結び付いた本質的利益である。この二層構造によって、米国の国際舞台における一貫性の無い行動や、中途半端な意思決定を説明することが可能となる。このモデルが示唆するのは、米国が全力を発揮できるのは、大統領の評判を維持する利益が、政権の真の利益と完全に一致する場合に限られる、ということなのだ。


By KokusaiSeikatsu

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