これに対抗し、ミャンマー国軍はイスラム過激派に対する容赦ない作戦を決行した。これを受けて、ヨーロッパではすぐさま、ミャンマーに対して、「民族浄化」やジェノサイドとの非難の声が上がった。タッマドーの司令部、そしてまず総司令官ミン・アウン・フライン上級大将に対する制裁が可決され、2019年7月に、彼のアメリカへの入国が禁止された。国家顧問のアウンサンスーチーも憂き目にあうこととなった。それまでは、スーチーの内政および外交の強力な切り札は、ヨーロッパからの好感であった。けれども、「ビルマ民主化のアイコン」が、ロヒンギャの危機的流れにおいて、国連国際司法裁判所の場も含め、イスラム過激派の活動を鎮圧するための国軍の軍事行動を支持したことで、これらの好感は多くの点で無に帰すこととなった。軍事政権への抵抗を評価されて1991年にスーチーに授与されたノーベル賞をはく奪せよ、との声まで上がった。

ロヒンギャをめぐるヨーロッパの反ミャンマーキャンペーンは、何の罪もない民族・宗教的少数派を虐殺するミャンマー国軍の犯罪者たちと、彼らの犯罪行為を黙認するミャンマーの民政を吊るし上げるためのものだった。このようにして、国際世論は、ロヒンギャに対する国軍の行動が犯罪的である以上、ミャンマー独立後常に中央政権に対して軍事闘争を行っているカレンやシャンなどの分離主義者たちによる反政府的な軍事行動の鎮圧も、同様に犯罪的であろうという考えに誘導されていったのである。

NLD自体も、今現在、民族的な課題解決のためのはっきりとしたプログラムをまだ持てていないという状況下で、ミャンマーの連邦化が必要であるとの意見が強まっていった。よく知られているように、十分に検討しないまま連邦化を急ぐと、国がバルカン化する危険性が高まる。国内および国外のプレーヤーたち――地域の天然資源開発による収益を横取りしようと企んでいる部族長、そして、これらの天然資源を、中央政府の目をかいくぐって開発することに関心のある、外国、特にヨーロッパの企業、さらには、新たに小国家が形成されることで、中国との国境に迫ることのできる、よりパワーのあるプレーヤーたちに関しては、もはや言うまでもないが――彼らは、バルカン化に並々ならぬ期待を寄せているのである。

こういった条件の下で、近年、NLDはタッマドーを国内の安全保障の役割から外すことを明確に求めてきたが、それによってミャンマーは、その統一と主権を保障していた国内の結びつきを失い、リビアやウクライナの二の舞になってしまう可能性がある。

ミャンマーは持ちこたえることができるのか?

ヨーロッパは、ミャンマーを、北朝鮮のような新たな「ならず者国家」とすることができるだろうか。さまざまな場面で、これに向けた努力が根気強く行われている。ミャンマーにおける政権交代に対する国際的な反応は、迅速で、非常に否定的なものであった。軍部の行動を非難し、拘束されている人々を解放するよう勧告した2月3日の「G7」各国外相による声明に続き、アメリカ大統領バイデンは、2月4日のアメリカ国務省における自らの初めての重要な外交演説の中で、ミャンマーでの出来事に関して時間を割き、軍事政権は責任を問われることになるだろう、とけん制した。そして2月8日、彼は、国軍幹部の資産を凍結することに関する大統領令を公布し、アメリカ財務省は、ミャンマー軍の幹部と関連のある10の自然人、3の法人に対する制裁を実行した。ニュージーランドはさらに進んだ懲罰措置を執ることを決め、ミャンマーの軍指導者らの入国禁止、彼らに対するすべての援助の停止、さらにはネピドーとのハイレベルでの軍事的・政治的交流を中断する、とした。

By KokusaiSeikatsu

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