米国の外交戦略におけるイデオロギー化について

カマルディン・ガジエフ

ロシア科学アカデミーE.M.プリマコフ記念世界経済・国際関係国立研究所主任研究員

E.M.プリマコフ 国立世界経済・国際関係研究所 教授、歴史科学博士

(翻訳:中村有紗)

リンカーン大統領はこのように主張しました。「アメリカは外敵によって破壊されることはない。それは、私たちが失敗して自由を失ったときにのみ破壊される」[1]。近年、アメリカ人は望むと望まざるとにかかわらず、致命的な過ちを犯し始めており、それがアメリカと現代世界全体の地政学的地位にますます影響を及ぼしているようです。それは、いくつかの、筆者の見るところ重要だと思われる過ちの要因、性質、そして起こりうる結果を分析してみれば分かります。これらの問題は、現代世界のインフラの変化に根ざしており、その結果、西洋全般、特に米国は、密接に関連した内的・外的な存立規模の課題に同時に直面していることを指摘しておかなくてはなりません。

内部課題の本質について

国内の政治分野に関しては、2020年から2021年にかけてのコロナウイルスの大流行による壊滅的な結果、政治的、社会的、経済的、倫理的分野における深い危機に関連した過ち、誤算、失敗についてであり、その本質は、2020年の大統領選挙でのJ.バイデン率いる民主党の勝利があたかも不正によってもたらされたかのような疑惑に表れています。特に重要なのは、今回の危機が、その性質、目的、意義からして、歴史に対する反乱、特定の勢力による遅れた復讐の試み、さらには歴史と歴史的伝統そのものの破壊行為と呼べるだろうということです。その結果、「黒人の命には意味がある」というスローガンを掲げた黒人とその支持者である白人による大規模な抗議活動が行われ、米国全体、特に奴隷制を敷いていた南部における、歴史上の政治家や国家指導者らの記念碑を破壊するキャンペーンが行われました。

このような抗議活動に参加した人々の主張や行動は、一定の留保をつけたうえで、理解することはできます。しかし問題は、奴隷制度の象徴に対して始まったキャンペーンが、次第にほかの歴史上の人物にまで広がっていったことです。これらの人物を抜きにしては、アメリカの歴史、民族、自然、精神、国民性を想像することができないような人びとですー建国の父であり有名な独立宣言の著者T.ジェファーソン、初代大統領J.ワシントン、黒人を奴隷制度から解放したA.リンカーン大統領、南北戦争の英雄W.グラント大統領などです。その中には、アメリカの発見者であるコロンブスや、イエス・キリストも含まれており、彼らの記念碑や南部連合の指導者たちの記念碑も無残に破壊されました。

アメリカの神聖な人格も基本的な価値観も攻撃され、世界の模範となる「丘の上の輝く都市」としてのアメリカの神話が破壊されています。さらに、アメリカの過去は、ブラック・ライブズ・マター運動とその支持者の態度や行動から判断すると、犯罪的な過去であるとされています。

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