J.バイデンは、2020年の初め、つまり大統領選のキャンペーンを開始する頃から、D.トランプによって中断されたオバマ路線を引き継ぐと主張し、Foreign Affairs誌に掲載された記事の中では、自分の政権は「アメリカをテーブルの中心に戻す」[10]と宣言しました。正式に大統領に就任した後の2021年2月に行われたミュンヘン安全保障会議での演説では、政権の主な戦略的外交姿勢を簡潔に、しかし明確に表現しました。「今日、米国の大統領として、私は世界に向けて明確なメッセージを発します。アメリカは戻ってきました。大西洋同盟は復活しました。私たちは過去を振り返ることなく、自信を持って皆で前を向いていきます」[11]。

1980年代の新保守主義者たちの間では、アメリカの外交政策を再イデオロギー化することが叫ばれていました。その代表者の一人であるN.ポドレツは、非イデオロギー的外交政策は不道徳だとさえ言いました。この原則に立ち返るかのように、現在、メディア戦争に明確なイデオロギー的特徴を与える試みとして、「思想戦争」を開始する必要があるという声が増えています。例えば、アメリカのジャーナリストであるCh.ウィントンは、「中国はその攻撃性で自由世界を新たな冷戦に引きずり込み、ロシアとイランはアメリカとの長期にわたる戦略的な対立関係を続けている。このような状況下、アメリカ政府は、大陸議会が独立宣言を採択して以来行ってきた思想戦争を、復活させるべきだ」[12]と指摘しています。この目的のために、アメリカと西側諸国のあらゆるリソース、特にラジオ・フリー・ヨーロッパ/ラジオ・リバティ、ラジオ・フリー・アジア、中東放送ネットワークなどを利用することが提案されています[13]。

思想・情報・文化戦争のメインターゲットは間違いなくロシアと中国です。そもそも、この2つの大国が、自由主義・一極的世界秩序による覇権が力を失いつつある主要な原因とみなされていることを考えれば、それは当然のことです。就任演説、国務省や国防総省での演説、さらには2021年2月のミュンヘン安全保障会議での演説など、バイデンの政策演説の主軸は、ロシア・中国との対決でした。

バイデンは就任演説の中で、米国が世界の舞台で行動するのは「力の模範によるのではなく、模範の力によってである」[14]と主張しました。 国務省のスピーチでは、この点を詳しく説明するかのように、こう述べています。「コストのかかる軍事作戦に頼って民主主義を促進することはしない」「武力で権威主義的な政権を転覆するつもりはない」[15]。

しかし、現実の対ロシア・対中国政策は、このテーゼとは真逆です。バイデンは、国務省で、中国を「最も深刻な競争相手」と呼ぶ一方で、ロシア封じ込め政策を強調しました。バイデン政権の外交の本質は、2021年3月19日に公開された、プーチンを「殺人者」と呼んだインタビュー、そして、翌20日にアンカレッジで行われた中国と米国の代表団の会談のトーン、雰囲気、そして結果に見ることができます。バイデン氏とアンカレッジの米国代表団の立場は、野暮ったさと妥協のなさに、力を背景にしたあからさまな脅迫が、有機的に組み合わされたものでした。

米国国務長官のE.ブリンケンによれば、米国および、より広い意味で、西洋の外交戦略のポイントは、中国の社会政治的発展モデルに対する効果的なオルタナティブであるべきだといいます。「中国のモデルに代わるものがなければ、彼らは思った以上に成功するだろう」と指摘し、これを防ぐためには、「我々の将来のビジョン、政策、道筋がはるかに効果的であることを示す」ことが必要です。このような状況において、中国を封じ込めるためには、軍事的および貿易・経済的な対立に加えて、中国の発展モデルが米国を中心とする西側世界の価値観よりも受け入れやすいものであるという認識を否定することを特に重要視すべきです[16]。

By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。