世界が、静的というよりもむしろ動的に、急速に変化するなかで、過去の現実を未来に向けて敷衍しようとする試みは、ユートピア的であるといわざるを得ません。アメリカではトランプとトランプ主義を生み出した旧来のやり方を通じて、そしてヨーロッパではナショナリズム、ポピュリズム、欧州懐疑主義、分離主義を通じて、すでに過去のものとなった遺産を取り戻すことはできないでしょう。

中国やシンガポールの成功は、ある意味、リベラリズムやリベラル・デモクラシーに対する判決のようなものだと思います。この2つの国の権威主義政権の経験は、有機的な社会文化システムと政治文化を持つ民族の政治的自己組織化の形態について、新しい世界観と社会哲学的な再評価の必要性を明確に示しています。バイデンについては、彼自身、リベラリズムの古い価値観や制度を復活させようとするなかで、アメリカが直面している新しい世界を全く理解していないように思われます。バイデン氏とそのチームは、世界を支配するという覇権主義的な主張が帝国の実際の能力に対応していないこと、米国の主張がその実際の経済、技術、人材、軍事、政治などの資源を大きく上回っていることを理解することができるでしょうか。最も重要なことは、「ディープ・ステート」やリベラル/一極集中型の世界秩序を擁護する人々は、多くの国がもはやアメリカを恐れていないことに気付いていないか、気付きたくないということです。アメリカは、ロシア一国ですら、「気付かせたり」、押さえつけたり、「消化」することができていないのです。

バイデンは「冷戦時代のブロックの対立に戻ってはならない、ライバル関係は我々全員に関わる問題での関与を排除してはならない」[24]と宣言しています。彼は、米国をパリ気候協定と世界保健機関に復帰させ、ロシアとのSTART IIIを延長し、イランの核合意への復帰を再交渉するための措置をとっています。また、ロ米首脳会談も行われました。

現在の状況では、様々な要因により、ユーロ・大西洋の統一を語ることは不可能です。アメリカとEUは、多くの留保がありながらも、同じ実存的課題への答えを見つける必要に迫られています。この課題には、この二つの、西側を構成する人びとの運命と展望が、おそらく、違った程度、違った形で、かかっているのです。この点、彼らのイデオロギー的な好みや方向性、外交戦略に境目が現れることは避けられないと思われます。この仮説の妥当性は、例えば、いくつかの重要な問題について、ロシアや中国の政策を非難し、時にはかなり激しく非難するなかでも、ほとんどのEU諸国が、ワシントンの警告にもかかわらず、ロシアや中国との貿易、経済、政治的な関係を維持し、さらには拡大しているという事実によって証明されています。

さらに、EUの主要国では、欧州の「戦略的自治」という考え方が具体化しつつあります。例えば、フランスのマクロン大統領は、英紙「エコノミスト」のインタビューで、「欧州は自らを独立した地政学的勢力として考え始める必要があり、そうでなければ自らの運命をコントロールすることはできない」[25]と述べています。しかし、ヨーロッパがこの状態を達成できるかどうかは別問題です。アメリカを中心とした西側の外交戦略がもたらした地政学的な結果のひとつが、ロシアと中国のさらなる接近であり、このことはワシントンが世界の平和に対する新たな課題や脅威に対する答えを求めてテーブルの先頭に立つことを容易に約束するものではない、という明白な事実を考慮することが重要です。


[1]Baldwin R. The Globotics Upheaval. Globalization, Robotics, and the Future of Work. Oxford: Oxford University Press, 2019. Р. 17.
[2]Бьюкенен П. Смерть Запада. М., 2003 // https://www.libfox.ru/543682-patrik-byukenen-smert-zapada.html
[3]Wallach Ph.A. Why America’s next president won’t unite us, whoever it is // Fortune. November 7, 2016.
[4]Heilbrunn J. Does the Assault on the Capitol Show America Is Doomed? // The National Interest. January 7, 2021.
[5]Tierney D. Not Even the Coronavirus Will Unite America // The Atlantiс. March 25, 2020.
[6]Ibid.
[7]Appelbaum Yo. How America Ends // The Atlantic. November 16, 2019.
[8]Ibid.
[9]McTague T. The Decline of the American World // The Atlantic. June 24, 2020.
[10]Biden, Jr. Joseph R. Why America must lead again. Rescuing U.S. foreign policy after Trump // Foreign Affairs. 2020. Vol. 99. №2.
[11]Remarks by President Biden at the 2021 Virtual Munich Security Conference // The White House. February 19, 2021.
[12]Whiton Ch. Bring Back the War of Ideas // The National Interest. January 14, 2021. Речь идет о Втором Континентальном конгрессе, состоявшемся 10 мая 1776 г. и принявшем резолюцию об отделении североамериканских колоний от Англии.
[13]Ibid.
[14]Joe Biden’s inauguration speech transcript, annotated // The Washington Post. January 20, 2021.
[15]Remarks by President Biden on America’s Place in the World // The White House. February 4, 2021.
[16]Строкань С. Америка переизбрала врага номер один // Коммерсантъ. 21.01.2021. №9.
[17]Kagan R. A Superpower, Like It or Not // Foreign Affairs. February 16, 2021.
[18]Ibid.
[19]Ibid.
[20]Маас: отпор РФ и КНР будет иметь ключевое значение для будущего альянса США и ЕС // https://tass.ru/mezhdunarodnaya-panorama/10864051
[21]Приведено по: Лебедев И. О противоречиях между Европой и США в отношении Китая // https://tass.ru/opinions/10779773
[22]Строкань С. Указ. соч.
[23]How the World Will Look After the Coronavirus Pandemic // Foreign Policy. March 20, 2020.
[24]Remarks by President Biden at the 2021 Virtual Munich Security Conference // The White House. February 19, 2021.
[25]Приведено по: «Защищаю суверенитет Европы»: Макрон хочет «переосмыслить» НАТО // https://www.gazeta.ru/politics/2021/02/21_a_13486988.shtml

By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。