大ユーラシアパートナーシップ構想の拡大促進:国家・企業・国際機構の利害の一致

キリル・バルスキー

ロシア外務省特命全権大使

セルゲイ・クラシリニコフ

ロシア産業起業家同盟副会長兼二国間協力部常務理事

セルゲイ・ミフネーヴィチ

ロシア産業起業家同盟多国間協力・統合部常務理事、政治学博士候補

(翻訳:青林桂)

 メガリージョナリゼーションとは、今日の世界経済体制の発展段階における主要トレンドの一つである。これは、個別の地域あるいはマクロリージョナルな下位構造を、単一のメガリージョナルな複合体に「集約」することを示唆しており、協力の障壁を減らし、より有利な生産機会を形成することで規模の利益を増大させることに繋がる政治経済統合プロセスにより進むとされる。こうした傾向の兆しは、地域的な包括的経済連携協定(RCEP)や、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP)などの例に見られる。また、環大西洋自由貿易協定や、EU・ASEAN自由貿易圏(FTA)なども進められており、その成果は様々である。


メガリージョナルな協定の形成は、同一の国が複数の貿易体制に同時に参加するという「スパゲティボウル現象」の複雑性を緩和し、更にはこの問題を完全に解決さえし得る可能性を持つ。「スパゲティボウル」は時と共にますます巨大化しつつある。2020年に発行されていた自由貿易協定は310件、届出は506件であったが、現在、その数は350の協定と568の通知に上ると言われている。すなわち、自由貿易協定と届出の数は、たったの一年で2015年から2020年までの過去五年間分の数と同等の増加を見せているということになる1

これに関して忘れてはならないのは、事実上「いかなる経済統合協定も、『地域の』パートナーとの関係における障壁は取り除き、第三国に対してはその様な障壁を維持するという差別的原則に基づく独自の自由化を示している」2という点である。メガリージョナルな協定を創出すれば、様々な二国間協定間の矛盾を解消し、協定参加国同士の取引コストや製造コストの本質的な削減が可能となる。

ポール・クルーグマンによると、連合の裾野が多数の国家やその集合体に及ぶことにより「市場支配力」が増大すれば、世界経済における他のプレーヤーに対する交渉の立場が著しく有利になるとされている。3個別の国の代わりに大規模な統合連合が交渉プロセスに参加することで、交渉の迅速化と、適応解の特定が促される。

また、ロシアの研究者マクシム・ブラテルスキーは、大規模連合体の高い競争力に関して「巨大資本(多国籍企業)は、統合連合と共に生じる大規模な消費市場を無視しないわけにはいかず、結果としてそこへ進出し、投資をすることになる。しかも、投資の際は被投資側の条件に応じる形となることだろう。」と指摘している。4これに加えて、メガリージョナルな連合体の形成は、最も重要なバリューチェーンの持続可能性(sustainability)と抗堪性(resilience)の向上と、新たなバリューチェーンの出現を促す。その結果として、COVID-19パンデミック期間中に深刻化した、サプライチェーンの途絶に係わる問題が現在解決されつつある。

ここで、メガリージョナルな協定が、必ずしも関税の削減を目的としているわけではないという点に着目したい。例えば、2020年11月15日にASEAN・中国・日本・韓国・オーストラリア・ニュージーランドの10カ国が署名したRCEPは、品目の92%と各種サービスの65%の貿易自由化に対応しているが、どちらかと言えば参加国間の既存の協定(その数28にも上る)を一元化するツールとして機能している。産業界全体の運営ルールを定め(海外事業者による50の経済分野への進出が論点となっている)、電子商取引や競争政策、知的財産の保護といった分野を規制している。同様のロジックは、米国が環太平洋パートナーシップ協定から離脱した後に新たに発行された、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」の根拠となっている。

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