このような協定から取り残された国際的な経済プレーヤーは益々不利な立場に置かれ、国際競争力の低下やコスト増に見舞われる。それゆえに、客観的にこうした協定に参加するつもりの無い国々は、自国のサブリージョンとの統合プロセスの前進を加速化し、メガリージョナル連合の形成機会を作り出すことが不可欠となる。

他方、全体像を見れば、統合プロセスは前出のメガリージョナル連合の外側でも活発に展開していることが容易にわかる。こうしたプロセスは、広大な地政学的空間に及んでおり、その世界経済における重要性を正しく評価することは困難である。その重心の一つが、ユーラシア経済連合(EAEU)である。

上述の傾向を踏まえると、2015年にロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチンが提唱した大ユーラシアパートナーシップ構想(GEP)という独自のメガリージョナル統合プロジェクトは、EAEU、加盟国のビジネスコミュニティ、そして主要な国外パートナーにとって極めて重要であると言える。

プーチン大統領は、連邦議会での年次演説で、ユーラシア経済連合(EAEU)、上海協力機構(CSO)、そして東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国を結集した経済パートナーシップの形成を支持した。52016年5月にロシア・ASEANサミットの結果として採択されたソチ宣言「互恵的戦略パートナーシップに向けて」には、ASEAN・EAEU・SCO間における互恵的協力関係の構築機会に関する条項が盛り込まれた。

プーチン大統領は、2016年6月にペテルブルク国際経済フォーラムでの演説で、「我々と我々のパートナーは、より広範な統合の輪郭を形作る上でEAEUが中心的存在になり得ると考えている。(中略)我々は、様々な深度・速度・協力条件・市場開放性での二国間・多国間貿易協定ネットワーク全体を頼みとすることができるだろう。それは、各国が科学・教育・先端技術分野の共同プロジェクトに関する契約に基づき確保した予算規模に応じた形となる。これらの協定はいずれも将来を見据えたものであり、調和のとれた発展基盤を、効果的で公平な協力の上に形成するものである。」と、自らの構想について具体的に述べた。6また、プーチン大統領は、大ユーラシアパートナーシップ構想に関する会話は、「EU諸国とも実施可能である。なぜなら、今日EUでは独立した主体や、政治・経済路線を求める声が高まっているからだ」7とも述べている7

大ユーラシアパートナーシップ構想の実現に向けた協力について、プーチン大統領は「分野別協業・投資の規制の単純化と一体化、テクノロジー・植物検疫に関する規制の非関税措置、税関管理、そして知的財産権の保護から開始し、将来的に関税制限の削減と最終的な廃止へ段階的にアプローチする」ことを提言した。8

ロシアとEAEU加盟国にとって、将来の大ユーラシアは、地域組織、国家戦略、自由貿易圏、経済回廊、輸送ルート、パイプライン、デジタル通信、その他大陸横断型プロジェクトのネットワークであり、それらは地域の平和・安全保障・繁栄の為に「統合の統合」というコンセプトに沿って調和的に発展していくものと考えられていた。

大ユーラシアパートナーシップは、例外無く全てのユーラシア諸国の参加を得た上で形成されるべきであるが、まず重要なのが我々のマクロ地域連合体の国家間「システム構成体」であるEAEU、SCO、ASEANとその加盟国である。そして、APEC、CIS、CICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)、SAARC(南アジア地域協力連合)、拡大トゥマンガン構想(ETI)など、パートナーシップに関心を持つ他の地域機構の加盟国も参加することが可能だ。これらの国々との協力は、大ユーラシアパートナーシップの「拡張」を促すものの一つとなる。

EAEUの発展ダイナミクスと、中国の「一帯一路」構想のようなマクロ地域諸国の地域統合イニシアチブとをネットワーク化することが、大ユーラシアの核となるプロジェクトになるであろう。EAEUと一帯一路の連携は、両構想の規模の大きさ、基礎となる原則、目的と課題、構想の共鳴、構想が実現する空間の一体性、そしてロシア・中国間のパートナーシップの戦略性により生じる。同時に、パートナーシップ協力のマルチラテラルな性質に焦点を当てることも重要である。それは、あるパートナーと他のパートナーの二国間関係の単純な合計ではなく、複雑な相乗効果を生み出す複合体となるものである。

By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。