COVID-19パンデミックは世界経済に痛手を与えた。多くの国が極めて厳しい状況に陥った。とりわけ、航空業界を始めとして、観光業、輸送業、中小企業など経済において最も「接点」を持つ分野が深刻な被害を受けた。また今日、ほとんどの国々が力強い経済成長を遂げているにも拘わらず、危機の克服には程遠い状況であり、開発の不均一性や、サプライチェーンのギャップや、特にデジタルなどで顕著な「悲鳴を上げる」程の各国間格差は悪化する一方である。

しかし、今日の世界経済は、COVID-19パンデミックによるネガティブな影響に加えて、貿易戦争、不適切な保護主義、一方的な経済制裁、そして不平等な経済などといったウイルスに悩まされている。多くの政治家たちの姿勢には、「自己責任」の原則が貫かれている。一部の近隣友好国との間でさえ、相互の信頼は失われている。本質的な利益を失っても猶、自国の客観的な要求に従うのではなく、第三国からの「命令的な勧告」に従う方を選ぶ国もある。

パンデミックの経済的な影響と、我々の数多くの友好国が取る非建設的な路線は、ユーラシアの統一アジェンダの重要性を殊更に際立たせている。このような未曽有の脅威に直面した大陸諸国が、問題解決に向けて、時の試練を経た効果的手段、即ち多国間協力の強化と地域経済統合の深化に目を向けているのは偶然ではない。

ユーラシア諸国が抱く、緊密な協力関係を築きたいという意志は、大ユーラシアを構築する上で前向きな可能性を開いている。大ユーラシアとは、安定・安全・繁栄の統一空間であり、全ての参加国の利益が平等の権利と相互尊重の基本原則に基づき保証される。

大ユーラシアパートナーシップ構想の魅力とは何か。また、本構想を実現することで、国家・ビジネス・地域全体に何をもたらすことができるのだろうか。

まず、それは国家間のコミュニケーションが正常へ戻ることを意味する。ユーラシア諸国の指導者たちは、我々の共通の大陸の経済発展に向けた見通しを自由に議論し、全ての国々に利益をもたらす方向性に向けた合意を形成することのできる、平等の権利と相互尊敬に基づく対話プラットフォームを持つべきである。世界中の国々がこの例に追随することを期待したい。

大ユーラシアパートナーシップの価値は、国際法の基礎となる規範と原則に合致する。これは極めて重要な点だ。なぜなら、近年見られる特定の国々の動きは、今日の世界秩序における国際法の基盤そのものや、平等と正義という理想への信念、更には国際関係における外交儀礼の初歩的な規範にさえも深刻な危機をもたらしているからである。大ユーラシアパートナーシップに掲げられた課題とその解決策は、大陸に住む何億人もの人々の願望や、ユーラシア諸国の大多数の都市から発せられる政治的態度を反映している。大ユーラシアの共同構築という理念は、今日この巨大な大陸が経験している歴史的瞬間のディテールと共鳴していると言っても過言ではない。

大ユーラシアパートナーシップとは、既存の地域・国家の開発プログラムや開発計画の間の共通点を探すことであり、それに基づき建設的協力に向けたプラットフォームを構築することである。その根底には、多様な戦略のシナジーを生むことができるという確信が横たわっている。

大ユーラシアとは、地域や国境を越えた輸送網を協調的に建設し近代化することであり、大陸間の連結性を強化することであり、貿易・投資・人々の交流の機会を拡大するような、複合的なバリューチェーンとネットワークに組み込まれたインフラ・物流・生産プロジェクトを創出することである。その為には、開発と規制、税関プロセスの簡素化、規格や技術的基準の調和に向けた巨大な体系的取組みが不可欠である。

ユーラシア空間を横断する経済回廊やネットワークの調和の取れたシステムを創出することで、大ユーラシアを効果的に実現することが可能となる。産業・農業・交通・通信の適切且つ科学的根拠に基づいた空間的発展や、新たな雇用・新たな都市集積・社会インフラの構築は、まず低迷している地域に新たな生命を吹き込み、産業全体を活性化することができる。そして、物理的にも物流的にも大陸全体を一つに繋げることが可能となる。

大ユーラシアとは、自由貿易協定と無差別貿易協定のネットワークでもある。ユーラシア経済委員会の交渉ブロックはこの課題解決を目指している。この努力により、間もなく自由貿易協定(ベトナム・セルビア・イラン・シンガポールとの協定)のリストに多くの国々が追加されることになるだろう。言うまでもなく、こうした合意に達することは本質的な貿易高の拡大に繋がり、製品だけでなくサービスの貿易も促進され、投資協力は新たな水準に達するであろう。

大ユーラシアにおける協力とは、主要な地域組織及び機構のパートナー関係を確立し、協力を強化することであり、また広範な国際的パートナーシップネットワークを構築することである。例えば、EAEUとASEAN、SCOとASEAN、SCOとEAEUの執行機関の間でコンタクトが増加している点が挙げられる(最後の二つの地域組織の間では、相互理解に関する覚書が2021年9月17日にドゥシャンベで開催されたSCO首脳会議の傍らで締結された)。

今日、ユーラシア各地において統合プロセスという形で表れている求心的な傾向は、客観的な性格を有して負い、集団的な基盤の上でしか確実な未来を得ることができないという激動の時代の機運と合致している。だからこそ、「新たなユーラシア主義」、すなわち力を合わせて「共通のユーラシアの家」を建設しようという理念は、専門家の心を捉えるだけでなく、国家の指導者・議員・ビジネス界の「キャプテン」たちをも魅了するのである。

大ユーラシアパートナーシップ構想への支持の高まりを認識せずにはいられない。

2019年6月5日付のロシア・中国による「新時代の包括的パートナーシップ及び戦略的協力に関する共同宣言」の中で、中国はEAEUの枠組みにおける統合プロセスの推進と大ユーラシアパートナーシップ形成のイニシアチブを支持した。この宣言の中で、ロシアも中国の「一帯一路構想」の支持を表明している。両国はまた、EAEUと「一帯一路構想」の提携に向けた協調的努力を強化していくことを決定した。14

By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。