リャブコフ:その点については憶測を述べるつもりはありません。なぜ我々がそのようなことをしないかという理屈を説明したいと思います。まず、問題が長期に亘るほど深刻であり、我々の提案やアプローチの中に明示されている時に、「プランB」があり得ると述べることは、我々自身の立場を弱めると同時に、対立陣営(はっきりといえば敵側)にとって、問題の解決を容易にすることを意味します。“Poker face”という英語の言葉がありますが、これは、テーブルの向こう側に座るカードゲームの対戦相手がカードを出しても、筋肉一つ動かすことのない石のような表情をした人のことを意味します。

二点目ですが、欧米人にわかりやすいように再度アメリカンスタイルで説明します。常に行動のオプションを残しておかなければなりません。特に重要度の高い政治的決断を下す指導者は、多種多様なツールが使えるように、様々な選択肢を持つ必要があります。例えそこに軍事力を示唆する意味合いが含まれていようとなかろうと、レトリックに限定しようとは誰も言っていません。単純に、決断はその時その時で様々であり、複合的な要素で成り立つものです。最終的な方向性を予測することはできません。我々には、ロシアが提案したプラットフォームで合意を取り付けるという課題があります。まさにそれに取り組む必要があり、「もしも」の議論に脱線してはなりません。

アガネシャン:ブッシュ(父)元大統領とコール元首相が、口頭ではあるものの、NATOは東方へ拡大しないとゴルバチョフ元大統領に約束した証拠があります。まさにこの点に言及した我々の提案に対する米国とNATOの反応は、特に厳しいものだったのでしょうか。

リャブコフ:そうですね。この三十年間に欧米諸国が経験してきた安心感は、誤った感覚であることを強調したいと思います。欧米は、一極世界が数世紀に亘り継続すると考えており、例えフランシス・フクヤマの「歴史の終わり」で述べられている考察が誤りだったとしても、それは些細なことで、とりわけロシアをわずかに後押しするだけだろう、そしてその後は、ここ数年に亘り台頭している中国との真の世界競争に向かっていくだろうと考えています。このような認識は、欧米のエリート達にあまりにも深く根付いているのではないでしょうか。ですから、2008年のブカレスト首脳会合でウクライナとグルジアのNATO加盟が決議された時に、我々はその公式撤回を断固として要求しましたが、その際我々は、NATOの更なる拡大、NATOの軍事インフラ、そしてロシアに対する様々な挑発行為を原則として排除し、1997年のロシア・NATO基本文書の調印時の状態に「巻き戻す」べきであると主張しました。これは我々の現実的な提案であり、こけおどしではありません。この理解を浸透させる為に全力を尽くす必要がありますし、実際に我々はそのような取組みを行っています。

繰り返しますが、欧米政府は大船に乗ったつもりで、「NATOは防衛同盟であり、ロシアは侵略者であり、NATOの安全を保障する必要があり、どの国もNATOへの加盟を自由に選択でき、NATOに加盟するか否かについては、『参加申請者』とNATO加盟国以外の誰にも関係のないことである」と、年に何度も様々なレベルで主張しています。そして時間とともに、欧米自らそれを信じ始めるようになるのです。我々がそれとは根本的に相対するアプローチをとると、彼らは驚いてしまいます。

しかし、それは彼らの問題です。欧米は、過ぎてしまったことは二度と取り返しがつかない、ということを受け入れざるを得ないでしょう。これは非常に重要なことです。

アガネシャン:米国とNATOは事実上、ロシアと中国との連携を促していると多くの分析家が指摘しています。ロシアのイニシアチブに対する中国の支援はどれほど重要なのでしょうか。

By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。