国際情勢を分析した上で、統合参謀本部議長のマーク・ミリー大将は、2020年12月2日のブルッキングス研究所での講演で、アメリカにとっての平和を維持するためには、アメリカの軍事ポテンシャルを増強し、同盟を強化し、世界のさまざまな地域の事情への介入を継続することが必要不可欠であると述べた。けれども、これに関し、彼は、いくつかの国家におけるアメリカ軍の駐留を縮小し、アメリカの軍事力のダイナミズムを保障するよう提言したのである。M.ミリー大将の議論には、彼が将来的に戦争を回避しようとしていること、ロシアや中国との軍事的衝突に向けて計画と準備を行っていることが現れていた。そしてこれは、これらの国との衝突を、彼はより複雑で深刻なものと見なしているということだけではないのだ。言ってみれば、これらの戦争は、始めるべきではないものであり、さらにその戦争における成功の基準となるのは、軍事的勝利ではなく、忍耐や、あるいはもしそれでもやはり戦争が起こってしまった場合には、「早急な収束と、衝突の鎮圧」であると彼は続けている。

 トランプ政権時代、アメリカの保守的右派グループによって、まず第一に、ロシア連邦に対する政治的コンセプト――規則に立脚した平和――が提起され、積極的に推進され始めたが、これは国際法に意識的に対抗するものであった。リチャード・ハース米外交問題評議会会長が自らの論文の中で中立的に指摘しているように、2017年1月、アメリカの対外政策における根本的な変革の実現が必要不可欠であると信じて大統領執務室に入ったD.トランプは、そこで、外国の脅威から国を守り、アメリカの重要な国益を堅持する方針を宣言したのである (4)。

 D.トランプ政権下では、冷戦の終末期に創設された、軍縮と軍備管理の分野の解体が引き続き行われた。アメリカは、弾道弾迎撃ミサイル制限条約と中距離核戦力全廃条約から脱退し、2020年11月、オープン・スカイズ条約の枠組みにおける自らの義務の遂行を公式に取りやめるという声明を発表した。しかしながら、この条約の作成に当たってイニシアティブを取ったのは、他でもないワシントンだったのである。

 アメリカのマイケル・ベックリー教授は、このテーマに触れ、現在まで効力を持つ軍備管理の分野における条約のうちのいくつかは、国家が自衛のために軍備を拡張し続けるにつれて、力を失っていくことになると書いている (5)。

 2018年にヘルシンキで行われたロシアのV.V.プーチン大統領とアメリカのD.トランプ大統領の会談に出席していたジョン・ボルトンは、両大統領は軍備管理に関する問題にも触れたと伝えているが、彼によれば、「表面的に触れただけ」であったという。新戦略兵器削減条約延長の見通しに関しては、トランプは2016年の大統領選前のキャンペーンの段階からすでに、これを「災厄」と呼んで批判していた (6)。


(4) Haass Richard. Present at the Disruption // Foreign Affairs. 2020. September/October.

(5) Beckley Michael. Rogue Superpower // Foreign Affairs. 2020. November/December.

(6) Bolton John. Op. cit. P. 151.

By KokusaiSeikatsu

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