アメリカの専門家たちの間では、D.トランプが大統領のポストでイニシアティブを取って実行している変革は、アメリカの国益と価値、そしてそのほかの自由社会および開かれた社会にとっての、好都合な国際秩序の保障を手助けするものでなければならないとの意見が出されていた。けれども同時に、アメリカの政治家には、国際社会における国の役割の向上と、中国やロシアといった国家が、アメリカの対外政策の軍国化を助長するつもりがない場合、それらの国との関係における新たな思考が求められている。

 優れたアメリカの外交官ウィリアム・バーンズとリンダ・トマス=グリーンフィールド (7) による『外交の変容。国務省をいかにして救うべきか』という論文で示された、D.トランプ政権下のアメリカにおける対外政策と外交の欠点に関する詳細な批判的分析は、興味深いものである (8)。

 彼ら独自の表現で「アメリカ対外政策の大群島」と示される内容を検討しながら、二人の著者は、「人々に対する、熟考された安定した投資」が、「よき外交へのカギ」であると指摘している。反対に、改革の分野における熟考された努力は、トランプ政権下で、彼の奇行、予算の圧縮、対外政策の過度な軍国化と、国務省の「不器用な官僚政治」によって駄目になってしまった。二人の外交官は、「職員の問題」に取り組むことを覚えたトランプ行政は、職員らを、元ホワイトハウス首席戦略官兼上級顧問スティーブン・バノンが「執行権力の崩壊」と評した事件の「メインターゲット」としたのであった。

 アメリカの「専門家と公的機関」に対する国民の不信感を背景に、トランプ大統領は、気象学者や民間療法師、法律家、そして最後に外交官の助けを得て「アメリカの国益のための国際秩序」を維持した、とバーンズとトマス=グリーンフィールドは主張している。

 キャリア外交官に関して言えば、彼らはワシントンの上級ポストから一律に遠ざかった。バーンズとトマス=グリーンフィールドによれば、2017年から、およそ四分の一の数の高位の外交職員がアメリカの外交職を離れたという。この数には、60%のキャリア大使も含まれる。

 「国外の状況は非常の暗いものである」と二人の著者は結論付けている。「大使を務める記録的な数の政治的天下りは、しばしば質がよくない」と彼らは続けている。論文の図解では、国外で働いていたアメリカ大使の名前が連ねられている。たとえば、在ドイツアメリカ大使リチャード・グレネルは、ドイツ人に対立を呼びかけた。この目的のために、彼は、自らの非常に下手な講義だけでなく、右派政党の支持も利用した、と二人の著者は明らかにしている。在アイスランドアメリカ大使ジェフリー・ロス・ガンターは、二年足らずの在職期間で7人もの「公館次席を、驚くべきテンポで」交代させたという。


(7) В январе 2021 г. Президент США Джозеф Байден назначил посла Уильяма Бёрнса директором ЦРУ, а Линду Томас-Гринфилд – постоянным представителем США при ООН.

(8) William J. Burns and Linda Thomas-Greenfield. The Transformation of Diplomacy. How to Save the State Department // Foreign Affairs. 2020. November/December.

By KokusaiSeikatsu

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