論文の著者らは、彼らがピックアップしたアメリカ大使を批判するだけにとどまらず、オバマ大統領の政権下にワシントンで働き、核問題に関するイラクとの会談に出席していた外交官の業務にも、批判の矛先を向けている。この職員らは、のちに汚名を着せられ、支援を得ることのないまま解雇されている。宣誓を受けて、ウクライナでのあの事件の際に憲法上の義務を果たしていた彼らの同僚は、その後中傷に遭い、自らの上司から見殺しにされた。2020年5月、国務省の監査官スティーブ・リニックは、マイク・ポンペオ国務長官が私的な目的で政府の資金を使用したことに関する問題の捜査を委任されたあとに解任された。

 手厳しい批判にさらされたり、降格させられたりした多くのキャリア外交官は、職を辞す道を選んだ、と二人の著者は検証している。彼らが引証した情報をもとに、著者らは、トランプ行政からの際限のない言いがかりを受けて、アメリカ外交は深刻な損害を被り、さらに国内外で膨らみ続ける問題を背景として、アメリカ外交は根本的な立て直しを必要としている、との率直な結論に至った。そして、両著者の考えによれば、その目標は、アメリカの影響力と明確な目的の強化にとどまらず、新たな時代に向けた外交の復活にあるのである。

 彼らの意見によれば、アメリカと、台頭する中国および甦ったロシアとの地政学的な競争が加速した、目まぐるしく変化する国際情勢に、国務省があまりにも注意を向けなさすぎた、と著者らは遺憾の意を込めて指摘している。さらには、国務省は、「お家騒動」と言うべきものにも注意を向けなかった。著者らの主張では、アメリカ外交の改革のための新たな議題の輪郭は、アメリカのヘゲモニーの復活からではなく、国際社会におけるアメリカの役割を、理にかなった形で再評価することに端を発さなければならない。著者らが考えているように、アメリカ外交は、徐々に力を弱めているものの、それでもやはり国際社会で重要視されているアメリカの役割を維持する必要があるのである。

 著者らは、事実上すべての上級外交官が、白人の代表であることにも不満を示している。そして、アメリカの外交官の構成が、代表する国家とようやく似たような状況になるよう、国務省は2030年までに、責任を持って義務を負わなければならない。これは人種的帰属だけでなく、ヘゲモニーにも関わるものである。

By KokusaiSeikatsu

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