全体として、カタールの外交活動における四つの基本的な方針は、ドーハとリヤドの間の戦略的な衝突だけでなく、湾岸協力会議内部やペルシャ湾における地域的関係のあらゆるパラダイムの下部構造であり、近東全体と、北アフリカ、中央アフリカにかなりの影響を及ぼしていると結論付けることができる。エジプトやリビア、チュニジア、シリア、イエメンを含む多くのアラブ諸国におけるカタールとサウジアラビアとの間の財政的、政治的対立、テレビ局「アル=ジャジーラ」と「アル=アラビーア」との間の情報戦、2020年のアメリカの支援のための闘いにおける競争に、深刻な経済危機と、新型コロナウイルスのパンデミックが引き起こした、エネルギー価格の「劇的な」下落が付け加わったのであった。これによりサウジアラビアは、社会的義務を果たすべきかなりの数の人口を抱えているために、再び、非常に不利な立場に立たされることとなった。

 反対にカタールは、危機的な期間をもっとも容易に切り抜け、新たな戦術的成功を収めてすらいる(たとえば、カタールのドル貸付に極端に依存しているトルコ経済とトルコの通貨リラに対する追加的な影響を獲得した)。このことは、カタールの全人口は300万人に迫ろうとしているが、政府が財政的義務を負っているカタール人は、そのうちたった10.5%にすぎないことと関連している[21]。まさにこれにより、天然ガスの売り上げによる収入が減少している中にあっても、カタールにはかなりの程度の「フリーキャッシュフロー」が残っており、これが、長引く危機において特別な意義を獲得しているのである。

 これとともに、このゴリアテに対するダビデの勝利の歴史は、ドーハの、地政学的な犠牲の大きすぎる勝利へと容易に転換しうる[26]。長引く通商の禁止は、トルコとイランへの構造的、軍事的、食料および物質・技術的な依存を作り出したが、これらの国々は、文化的、宗教的、民族的、戦略的課題において、カタールとはかなり遠い。反対に、サウジアラビアは、戦術的失敗と中期的な問題に直面しながらも、長期的目標を追求し、とりわけアメリカを主たる戦略的同盟国として頼りにするという自らの主要な方針を堅く守り続けている。

 このようにして、湾岸協力会議内部を筆頭とする、ペルシャ湾の国々の間の関係のパラダイムの発展の展望は、ある種の確実性とともに、正弦曲線のグラフ(そのピークは地域統合の進展と対立の緩和に[13, p. 309-317]、逆にマイナスのピークは危機の到来と外交関係の緊張に対応する)によって書き表すことができる。確かに、「ブラック・スワン」[i]ともいうべきありうべきいくつかのリスクは予見できるもので、例えば、サウジアラビアにおける王朝の危機、アメリカ国内で深刻化する政治的不安定、新型コロナウイルスのパンデミック後の長引く世界経済の低迷などがある。これらの出来事の結末(相乗効果をもたらしうる)がどうなるのか、それは、多少とも論拠に基づいた予測の範疇外になることだろう。


[i] それが起こったあとに、回顧的に見れば、急進的な性格と解釈を持つような、予見することが困難で、重大な結末を持つ稀有な出来事を検討する理論。この理論の提唱者は、哲学者、作家、歴史家であるナシム・タレブ。

By KokusaiSeikatsu

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