「国際生活」:すると、もしかして、このような分野の発展の結果、競争社会におけるその展望について、もはや心配する必要はない、ということでしょうか。

シャフラニク:逆に、石炭工業は、新たな強力な乗法的効果の起爆剤となりえるものです。そのためには、利用可能な最良の技術と、先進的なデジタル・テクノロジーおよびインテリジェント・テクノロジー、システムのロボット化、AIと、炭化水素原料の高度な処理の活用を保障する、新たなテクノロジーの活用への、石炭部門の段階的な移行が必要不可欠です。

 確かに、価格が低い期間が長引くことは、新たな将来性のある石炭産地、特に、輸送とターミナルのインフラを発達させる必要のあるような場所を獲得するための、根本的なリスクファクターです。けれども、ロシアの石炭企業は、石炭採掘の原価に関わる確固たる地位を保守していて、海外の市場における自らのセグメント獲得にとって、これがかなりの重要性を持っているのです。

「国際生活」:具体的には、どこでしょうか。

シャフラニク:エネルギーバランスにおける石炭の使用は、アジア太平洋地域の、急速に経済発展を遂げている国々において特に大きく(47%)、その割合は、世界で消費されているエネルギーの44%になります。また、石炭は、アフリカ(22%)、独立国家共同体(14%)、EU(13%)といった地域の電気エネルギーの生産において、無視できない割合を占めているのです。さまざまな複雑な点を考慮に入れてみても、中期的な見通し(5から10年)の中で、石炭は、主要なエネルギー源の一つとして残るだろうと予想できます。

 British Petroleumが2019年の年末に発表したデータによれば、ロシアは、アメリカに次いで石炭の埋蔵量が世界第二位となっています。そして、採掘の到達水準を考慮に入れると、ロシア連邦内の石炭の総埋蔵量は、370年分ということになります。けれども、たとえその埋蔵量、採掘と輸送に関して、十分に採算を見込めるのが今後数十年だけであったとしても、石炭部門が十分な働き口を保障し、国の輸出による収入源の中でかなりのウエイトを占めていることから、鉄道と港湾のインフラ発展の分野における、石炭工業への国家の支援が正当化されているのです。

 「残念ながら、石炭関連企業の目下の重要問題は、アジア方面への石炭の輸出ルートが整っていないことだ。」そう考えているのは、ケメロヴォ州選出の上院議員アレクセイ・シニツィンです。「シベリア横断鉄道およびバイカル・アムール幹線鉄道は、石炭の基本的な流通を妨げるボトルネックとなっている。現在、我々が生産し、この市場で求められるはずの総石炭量を、この方面に輸出することができていない。そのため、バイカル・アムール幹線鉄道およびシベリア横断鉄道の輸送能力の拡充を念頭に置いた、東方の重点地域の発展とも言うべきものが、特に東の方面でも石炭部門を発展させるにあたっての、最重要ファクターである。」

 いずれにしても、まさにアジア市場では、現在、世界で生産されている石炭エネルギー全体の80%の需要があるのです。

 これは現在の話ですが、「今後の」370年に関して言えば、おそらく、それよりはるか前に、地球上で石炭はまったく必要とされなくなっているでしょう。しかし、今は、今日到達した生産性と創造性のテンポを緩めることなく、生産を維持することが必要なのです。

 短期的・中期的な見通しにおいて、ロシアの石炭はその市場でのポジションを明け渡すことはなく、海外(何よりもまず、アジア太平洋の国々)の消費者に必要とされることでしょう。そうなれば、ロシアの国内産業の収入も保障されることになります。石炭部門で実施されている改革と、それによって達成された結果(生産効率と採算性、労働生産性、環境と競争力)があるからこそ、確信を持ってそう言えるのです。

 けれども、今後10年間、我々は、現状を丁寧に分析し、世界の石炭市場の発展を十分に予測して、高度な加工技術や、石炭化学による製品を中心に据えた、新たなテクノロジーの活用へと、石炭部門の揺るぎない移行を達成しなければなりません。これは待ったなしの、非常に重要な挑戦となるでしょう。

By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。