現代の国際関係におけるSCOの役割:ウズベキスタンからの視点

ラフムトゥッラ・ヌリンベトフ

ウズベキスタン共和国外務省地域連合協力局長、ウズベキスタン共和国SCOコーディネーター

(翻訳:安本浩祥)


2021年6月15日、上海協力機構(SCO)は設立から20周年を迎える。その比較的短い時間の間に、この組織はユーラシアでも最も影響力のある多国間組織の一つに成長した。

SCOが設立されたのは、20世紀の終わりに国際関係が根本的な変化を迎えた時期であった。その変化とは冷戦の終結と世界のパワーバランスの変化、ユーラシアにおける新しい地政学的状況と新しい地域的パワーセンターの誕生、グローバリゼーションとリージョナリゼーション、さらには従来の脅威に代わって、テロリズムや過激主義、分離主義などの新しい脅威が台頭したことである[1]。

その複雑な時期に、当時まだ独立したばかりの中央アジア各国が、新しい脅威と問題に対処するための地域協力を必要としていたことは容易に理解できるだろう。SCOの誕生は、中央アジアの安定と平和を守るための努力が結実したものだ。旧ソ連構成共和国であった5カ国のうちの4か国(カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン)が、ロシアや中国という大国を含む地域連合に参加することになったのだ。

地域的次元でみたSOC

上海協力機構はいままで、いくつかの停滞期間はありながらも、テロリズム、過激主義、分離主義、麻薬密輸への対策をはじめとする地域の安定確保の分野において協力を推進する組織として成長してきた。この分野におけるSCOの活動は、すでに組織的なものだ。2004年以降、タシケントにはSCO地域対テロ組織(RATS)の本部が置かれている。

中央アジアの安定と平和の確保における上海協力機構の役割は、海外の専門家たちによって様々に評価されている。「中央アジアにおける安定の要」と評価される一方で[2]、主に欧米の専門家らからは、安全保障における有効な地域組織とはなりえなかったと評価されることもある。彼らは特に、上海協力機構が、地域における危機的な状況の中で有効な手立てを打つことができなかったと主張する[3]。

しかしそれらの批判が見落としているのは、上海協力機構は確かに安全保障問題について真剣に取り組んでいるものの、決して「軍事政治的機構」ではないということだ。中央アジアの戦略的安定と平和への上海協力機構の貢献を評価するためには、より幅広い視点に立つことが必要だと我々は考えている。

第一に安定と平和とは幅広い概念であり、主権と領土保全だけでなく、持続可能な発展と社会的な安定をも含むということだ。まさにこのようなアプローチでこそ、上海協力機構の安定化の役割を客観的に正しく評価することができる。つまり、一般的に上海協力機構は安全保障分野における組織だといわれるものの、実際にはその活動はより幅広い分野にわたっている。

第二に、多くの海外の専門家らは次の事実を見落としている。上海協力機構の根本である上海宣言と憲章で謳われているのは、「政治、経済、文化、人道、その他分野における協力の強化」である、という点だ。つまり、上海協力機構の加盟各国はこの組織を、従来的な意味での集団安全保障機構や軍事政治同盟として設立したわけではない。上海協力機構で事務総長を務めたラシド・アリエフが指摘しているように、この組織は新しいタイプの地域組織であり、普遍的な目的を有している[4]。

第三に、SCOに否定的な人々は、「上海精神」が持つ深い意味とそれが果たしている役割について、十分に理解していない。「上海精神」は次の原則からなっている:「相互信頼、互恵、平等、協商、文明の多様性の尊重、共同発展」だ。つまり、加盟各国の政治力、軍事力、経済力には差があるものの、すべての加盟国は平等である。

「上海精神」は、上海協力機構における意思決定が全会一致によることにも現れている。それは「中小の加盟国」が中国とロシアと対等に、SCOの政策決定に積極的に参加できることを意味する。よって、SCOが大国である中国とロシアの「傀儡組織」であるという評価は根拠のないものだ。

第四に、SCOは従来の意味での経済ブロックではない。SCOを経済機構に発展させようという考えは中国の提案によるものだ。中国政府は2010年から、SCO発展銀行とSCO発展基金(専門口座)の創設という2つの重要プロジェクトを推進している。中国政府は自由貿易ゾーン(FTZ)も構想している。これらのイニシアティブは、加盟国がコンセンサスに至っていないためまだ実現はされていないが、議論の俎上に上り続けている。例えばロシアは、ユーラシア経済連合と一帯一路との協力を提案している[5]。

以上のことから、SCOが中央アジアの安定と平和に果たしている役割について、「集団安全保障の組織」か、それとも「統合のための地域連合」か、という見方では、SCOが地域の安定において果たしている役割を十分に理解することはできないといえよう。

残念ながら欧米の政治評論家たちの間では、SCOについてのステレオタイプ的理解が依然として残っている。いまだに地政学的な見方がなされており[6]、「上海ファイブ」が結成された当時、中国と国境を接する旧ソ連構成共和国との信頼強化が主目的であった頃からは状況が大きく変化していることを見落としている。彼らは当時の事実をもって、SCOはロシアと中国が中央アジアを支配するための「地政学的取引」である、とみなしている。そのため、SCOをNATOの対抗勢力であるかのようにみなしているのだ[7]。

SCOの転換:中央アジアからユーラシアへ?

上海協力機構にとって最近の大きな出来事と言えば、2017年、インドとパキスタンという二つのアジアの大国を迎えたことだ。インドとパキスタンは「新加盟国」というだけでなく、互いに対立しあう政治力を持った「地政学的プレーヤー」でもあることは言うまでもない。

上海協力機構は地域を超えた機構の一つに成長している。加盟国を合わせると、その政治力、経済力、軍事力、人口は巨大な力を有している。

ーSCOの加盟国のうち4か国(ロシア、中国、インド、パキスタン)が核保有国であり、ロシアと中国においては国連安全保障理事会の常任理事国である。

ーSCOの領域において世界人口のほぼ半分が生活している。

ーSCOの総面積はユーラシアの60%を占めている。

ーSCO加盟国の総GDPは世界GDPの約23%である。

一方でインドとパキスタンが加盟したことにより、SCOの内部はより「多様なもの」となった。インド政府とパキスタン政府との間での多くの未解決の問題に加えて、2020年からは国境衝突をきっかけにした中印関係の緊張もある。

さらに、パンデミックなどの根本的な変化が世界で起こっているなかで、SCOには新しい課題への対処が求められている。

SCOがユーラシアのなかで影響力を行使し、新しい世界秩序の形成に参加しようとするならば、課題をもう一度設定しなおし、変化する現実に自らを適応させていかなくてはならない。

多くは機構内の力関係に左右される。今後のSCOの行く末をめぐる基本的な条件の一つとなるのが、ロシア、中国、インドの三か国による協力関係だ。いままでSCOの「推進力」ともいわれていたモスクワと北京との間のタンデムに代わって、RIC(Russia-India-China)というフォーマットがうまく行くかどうか、注目すべきであろう。

SCOにおけるウズベキスタンの優先課題

ウズベキスタンはSCOの設立当初からの加盟国として、すべての加盟国の利益になるような有望な方向性における実務的な相互関係の構築を通じて、組織としての潜在能力を十分に活かしたいと考えている。

2016年12月、ウズベキスタン共和国大統領にシャフカト・ミルジヨエフが選ばれたことによって、外交政策に大きな変化がもたらされた[8]。もっとも大きく変化したのは、ウズベキスタンの中央アジア政策だ。ミルジヨエフ大統領は中央アジアをウズベキスタンの外交の最優先課題とした。安定と協力、善隣関係と今ある未解決の問題の前向きな解決、それがウズベキスタン政府の新しい基本方針となった。[9]

ウズベキスタンの外交政策の変化は、その多角外交においても反映されている。近年、ウズベキスタンは国際組織や地域組織において積極的に参加している。その具体的な成果として、2021年から2023年の国連人権理事会の構成国に選ばれた。[10]

この傾向がSCOにおいても同様であることは疑いを入れない。2020年1月、ミルジヨエフ大統領は議会への教書演説のなかで、「上海協力機構との関係発展は、ウズベキスタン外交の重要な方向性であり続ける」と述べている。

ウズベキスタンのここ数年におけるSCOでの活動を振り返ってみれば、次の新しい点を指摘することができる。

まず第一に、ウズベキスタンにとってSCOは、中央アジアにおける安定と幅広い協力のために、重要な多国間の場であり続けるということだ。2017年にインドとパキスタンが加盟したが、ウズベキスタンは中央アジアが依然としてSCOの「地政学的軸」であることを確信している。[11]

ウズベキスタンがアフガニスタン問題についてもSCOの関与を求めていることは、アフガニスタン・イスラム共和国が地域プロセスによりアクティブに参加していくという文脈[12]のなかで、より「地域を重視する」姿勢として理解されよう。いいかえれば、新ウズベキスタン外交の「地域主義」は、その新しい「SCO政策」としても表れているのだ。

第二に、ウズベキスタンのSCOへの姿勢がより積極性を増したことが指摘される。特に、従来は積極的に関与してこなかった問題について、この変化が顕著である。ウズベキスタンは最近、SCOの共同対テロ軍事演習に、完全な形で参加している。2008年8月28日に調印された上海協力機構共同対テロ演習計画実施協定および2007年6月27日に調印された上海協力機構共同軍事演習実施協定の両方に、ウズベキスタンは加わったのである。

第三に、ウズベキスタンの多角外交において、そのSCO政策も含めて、イニシアティビティとプラグマティズムが目立ってきた点である。ウズベキスタンは自らの国益に適う多角的協力の拡大を推進しており、それは地域における安定と協力の強化という優先課題に沿ったものだ。

近年、ウズベキスタンはSCOのなかで新しい協力プラットフォームを生み出しており、例えば、SCO民間外交センターのタシケントでの設立、鉄道関係担当者会合というメカニズムの立上げ、国際観光研究所「シルクロード」のサマルカンドでの設立などがある。

最近4年間で、ウズベキスタンは30以上の提案を行ってきた。この数は大変大きな数字である。

第四に、ウズベキスタンはSCOのいままでの成果を踏まえた上で、多角的協力の巨大なポテンシャルをさらに効率的に活用することを提案している。

ウズベキスタン政府が掲げるモットーは、「SCOは、我々一人一人が強い時にこそ、強い存在となる」というもので、ミルジヨエフ大統領が2021年11月10日に開催されたSCOサミットでそのことを述べている。

つまり、ウズベキスタンはSCOの枠組みのなかで、建設的かつ有益な相互協力を提案しているわけであり、SCO憲章が定める「共存共栄」の利益に適合する他国の提案を支持する用意がある。

「上海エイト」の活動に新しい内容を与えること、新輸送路の開発や、イノベーティブなデジタル化、経済発展の新しい分野の探索、気候変動や環境問題への各国の努力の結集など新しい方向性を加えることが重要だ。

ウズベキスタンはSCOにおける新しい活動の拡大を望んでおり、新しい国としての意味づけと国際的な位置づけを高めようとしている。

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1Depeyrotb Georges. The Shanghai Cooperation Organization: An Historical Perspective // https://www.e-ir.info/2015/09/17/the-shanghai-cooperation-organization-an-historical-perspective/

2Huasheng Zhao. Security Building in Central Asia and the Shanghai Cooperation Organization // Japan’s national center for Slavic and Eurasian studies // http://133.50.171.227/coe21/publish/no2_ses/4-2_Zhao.pdf

3Saksena Amit R. The Shanghai Cooperation Organization and Central Asian Security // The Diplomat. July 25, 2014 // https://thediplomat.com/2014/07/the-shanghai-cooperation-organization-and-central-asian-security/

4Alimov Rashid. The Shanghai Cooperation Organisation: Its role and place in the development of Eurasia // Journal of Eurasian Studies 9(2). August 2018. P. 117.

5Лукин А.В., Якунин В.И. Пути и пояса Евразии. Национальные и международные проекты развития на Евразийском пространстве и перспективы их сопряжения // М.: Весь Мир, 2019. 416 с.

6Contessi N. China, Russia and the Leadership of the SCO. A Tacit Deal Scenario // China and Eurasia Forum Quarterly. 2010. Vol. 8. №4. P. 101-123. 

7McClellan Scott Andrew. The Shanghai Cooperation Organization: Should the U.S. be Concerned? // https://apps.dtic.mil/sti/pdfs/ADA589436.pdf

8Узбекский Дэн Сяопин: новая внешняя политика Шавката Мирзиёева // https://russiancouncil.ru/blogs/sofia-paderina/33998/

9Выступление Президента Республики Узбекистан Шавката Мирзиёева на международной конференции «Центральная Азия: одно прошлое и общее будущее, сотрудничество ради устойчивого развития и взаимного процветания» в Самарканде // http://uza.uz/ru/politics/vystuplenie-prezidenta-respubliki-uzbekistan-shavkata-mirziye-10-11-2017

10Учиться работать в новых условиях. Интервью министра иностранных дел Республики Узбекистан Абдулазиза Камилова главному редактору газет «Янги Узбекистон» и «Правда Востока». №221. 2020. 23 окт.

11Из выступления Президента Республики Узбекистан Ш.М.Мирзиёева на Астанинском саммите ШОС 9 июня 2017 г. // Архив  МИД Республики Узбекистан. 12Турсунов Б.Э. Стратегические приоритеты в ШОС: взгляд из Узбекистана // www.isrs.uz/ru/maqolalar/strategiceskie-prioritety-sos-vzglad-iz-uzbekistana