マルセロ・エブラル・カサウボン

メキシコ外相

(翻訳:東里恵)

ロシア―それはメキシコにとって大変関心のある国である。我々はロシアの文化や歴史を大変深く尊敬し、ロシアによる科学への多大な貢献と国際舞台での役割を認めている。

メキシコとロシア両国は、1890年12月11日の外交関係樹立から130周年を迎える。協力することが我々の社会に具体的な利益をもたらすという信念に基づき、二国間の関係をさらに強化していくという我々のコミットメントを、130周年を迎え再確認することができる。

長年にわたり、芸術家、詩人、音楽家、作家、歴史家、社会活動家など、著名人の交流が増えてきた。おそらく最も有名な例は、映画監督セルゲイ・エイゼンシュテインが1930年代初頭にメキシコを訪れたことだろう。このような交流は、相互理解と協力に基づく強い絆を築き、両国民の間で豊かで実りある対話を維持するのに役立つ。これらすべてが、両国間の交流の継続性を強化し、内容を充実させ、促進してきた。

二国間関係の始まりとなったこの文化交流は、今後も友好関係に大きく貢献していくことだろう。モスクワのマネージュ中央展示場とサンクトペテルブルクのファベルジェ美術館で、2018年と2019年に開催された展覧会 「ヴィヴァ・ラ・ヴィダ、フリーダ・カーロとディエゴ・リベラ(原題:¡Viva la vida! Frida Kahlo y Diego Rivera)」はロシア国民から高い評価を得た。また、2018年にメキシコシティのベジャス・アルテス宮殿博物館で開催された、ワシリー・カンディンスキーの作品50点以上を展示した「小さな世界」展も、国立トレチャコフ美術館の協力を得て開催され、大成功を収めた。

130周年を記念した様々な活動の中で、両国の豊かな関係性を示す、歴史資料と写真の合同展示会が開催される。メキシコ政府はまた、ロシアの広大な領土での存在感の拡大に取り組んでいる。そのため、昨年はメキシコの日がサマラで開催され、現在、同様のイベントがノボシビルスクで準備されている。

両国における既存の相互の共感に基づき、政府間の対話はダイナミックに発展しており、メキシコとロシアの外交の長く輝かしい伝統によって深化している。我々は、国際協力の重要性を確信し、国際法の規範、特に国家の法的平等を尊重する。

これらの原則に従うことで、メキシコとロシアは緊密な二国間関係を維持してきた。2020年2月にセルゲイ・ラブロフ外相がメキシコを訪問したことは、最も開かれた交流を維持することへの相互の関心を確認するものである。その後まもなく発生したCOVID-19のパンデミックは、我々の関係が戦略的で相互支援に基づくものであることを確認し、世界的な課題に直面した際には、力を合わせてコンセンサスを構築することの重要性を再認識させてくれた。

メキシコとロシアは、世界の多国間秩序へのコミットメントを示した。我々の国は、参加している国際フォーラムでは積極的に交流している。我々は、貧困と不平等との闘い、気候変動、国際的な平和と安全保障のための協力などの問題について、意見を合意するための最良の代替プラットフォームとしての役割を果たしていると確信している。          

国連での仕事の一環として、我々の議題は多岐にわたる。今年4月の国連総会で、メキシコが起草し179カ国が共同提唱した「医薬品、ワクチン、医療機器への世界的かつ公平なアクセスの確保」に関する74/274号国連決議が採択された。それを可能にしたコンセンサスに参加してくれたロシアに我々は感謝している。メキシコは2021年から2022年の間に国連安全保障理事会の非常任理事国として参加し、その2年の間に我々の交流はさらに重要になる。

G20の中で各国にはそれぞれ優先事項があり、我々はその組織に建設的に関与することを目指している。また、世界貿易機関(WTO)やアジア太平洋経済協力(APEC)などの重要な分野でも協力している。さらに、メキシコの場合は太平洋同盟、ロシアの場合はユーラシア経済連合という、我々が加盟している地域機構間での貿易・経済協力のメカニズムを構築することを計画している。

メキシコは世界第15位、ロシアは世界第11位の経済大国である。我々は共に、ビジネスミッションの促進を含め、双方向の貿易と投資の流れを増やすために努力している。ロシア連邦商工会議所のロシア・メキシコ起業家委員会の活動は最近再開された。その会員の拡大や野心的なビジネスプログラムは、経済分野でのメキシコとの関係緊密化への関心の高さを示している。また、来年には経済協力の分野において合同委員会が開催されるが、これは広く持続的な関係の活性化に向けた取り組みの成果である。

1996年以来、両国間では、科学技術協力に関する政府間協定が発効しており、これに基づき、この分野の関係強化に努めている。我々は、航空宇宙や情報技術などの分野で既存の可能性を活用しようとしている。すでに第一歩は踏み出されており、交流を拡大し、両国の様々な大学や機関を訪問し、協定を締結している。また、専門医の育成に向けた協力体制の確立にも努めている。

観光の分野では、COVID-19のパンデミック前、両国の観光交流は過去最高を記録した。2018 FIFAワールドカップの成功のおかげで、6万4,282人のメキシコ人がロシアを訪れた。これは記録的な数字である。2019年にメキシコを訪れたロシア人は8万4,511人で、過去3年間と比べて175%増加した。コロナウイルスの大流行は、この分野に強い影響を与えたことは間違いないが、疫学的な状況が許す限り、相互の関心によって再び確固たる勢いをつけることを確信している。

以上のことを考慮すると、ロシアはメキシコにとって重要なパートナーであり、今後もそうあり続けるであろう。我々の関係は強く、今後の見通しも明るい。今後も二国間の絆を深め、対話と相互理解を拡大し、あらゆる分野での協力関係強化に取り組んでいく。そのための全ての条件は揃っている。

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By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。