セルゲイ・ポスペーロフ
集団安全保障条約機構議員会議事務総長、
モスクワ国立経営大学・ロシア外務省付属モスクワ国立国際関係大学助教授、経済学修士
(翻訳:青林桂)
モデル法は議員外交が国際問題の渦潮に架けた「ローマの橋」
この10年にわたり、集団安全保障条約機構(CSTO)は、国外の脅威から加盟国の地域的・集団的な安全を保障する上で国際的に定評ある手段として機能してきた。
CSTOの有効性は、外部国境における長年の平和状態と、共通課題の中和に向けた多角的アプローチに裏打ちされている。
この中でCSTO議員会議が担う役割とは、集団安全保障体制を機能させる上で模範となり得る法律を整備する事だ。
所掌地域における軍事・政治的情勢の的確な予測とモニタリングに基づく国内法の調整・整合・改善がCSTO加盟国議員の目下の課題である。
活動計画の枠組みの中で、CSTO議員会議はモデル法及び提言内容を検討し、加盟各国の議会はその内容に基づいた国内立法措置を行う。
他方で、世界安全保障・地域安全保障・国家安全保障上の問題点は、いずれもより包括的な性格を帯びてきている。
「ソフトパワー」という文脈で考えれば、世界の安定的発展に対する現代の課題と脅威は、従来型の戦闘行為の境界を越え、デジタル・経済・人道的領域へと広がっている事がわかるであろう。
そこで、CSTOの発展に向けた戦略的課題と優先度、更に国際関係の強まる緊張と情勢の変容を考慮に入れ、議員会議は次の重要方針に沿ったモデル法制定を実施している。
– CSTO加盟国の国家安全保障及び軍事的安全保障の確保
– 調停の可能性を含めた集団安全保障体制の改善
– 軍事的・技術的協力関係の発展
– テロリズム及び過激主義、違法薬物の流通、人身売買、武器の違法取引、並びに国際犯罪への対策
– 情報セキュリティの確保
– 重要施設の保護
– 犯罪及び緊急事態への集団的対応
また、歴史的事実の保存・保護や、青少年の愛国心育成という課題にも絶えず注意が向けられている。
法整備プロセスに要求される質と完成度は、専門性を有する議会体制、CSTO加盟国の所轄官庁の参画や、モデル法草案の作成・承認に関与する組織と専門家のレベルの高さに裏打ちされる。
体系的且つ総合的に課題へ取り組むことで、CSTOモデル法の基礎は、現代的であると同時に多くの先進的な特徴を有し、また国家レベルでの高度な実行性を伴うものとなっている。
専門家協力の顕著な例が、サンクトペテルブルク国立大学東洋研究所のプロジェクト「ユーラシアの不安定の弧」への長年にわたる議員会議の参画だ。これにより、事実に基づいた科学的分析を臨機応変に考慮しつつ、CSTO所掌地域及び加盟国における軍事・政治的状況をモニタリングする事ができている。
こうした協業の真価は、ベラルーシ及びキルギスの政治的危機や、ナゴルノ・カラバフ情勢が「戦闘過熱状態」にあった際に顕著に見られた。
上述の方針に沿った取り組みは、将来の国家横断的な協力関係においても有効であり続けるであろう。2020年11月には、CSTO加盟国の国内法の調整・整合に係わる課題及び対策項目が、議員会議の2021年度-2025年度行動計画に正式に追加された。
以上の働きにより得られた成果は、CSTOの法定目標達成、国内法調整という課題解決、そして広大なユーラシア大陸のオブザーバー国及びパートナー国の制度的発展において、モデル法が効果的に機能するメカニズムであるという事実を揺るぎ無いものとしている。