新型コロナウイルスパンデミック後の世界と、 ユーラシアにおける統合プロセスの見通し

オレグ・ステパーノフ
ロシア外務省対外政策計画部長

(翻訳:青林桂)

親愛なる同僚であり、

友人の皆様、

『国際生活』主催による第11回ヤルタ会議に参加する機会を得ることができて嬉しく思います。当フォーラムは、国内外の専門家の間でも重要なイベントとして知られており、生産的な議論の過程で生まれる知的成果物には高い評価が寄せられています。

私たちの世界を襲った新型コロナウイルスの世界的流行は、国際関係における変革プロセスを加速させました。コンスタンチン・オレーゴヴィチが指摘するように、時空間が圧縮された環境においてその作用は格別です。パンデミックはあらゆる人々に影響を及ぼし、個人、家族、国家、共同体、そしてグローバル・ガバナンス機関に試練を与えました。医療・経済・貿易の危機を通じて、コロナウイルスは既に不安定な国際関係を揺るがし、不信感と衝突を強めることに「貢献」しました。残念ながら、世界は問題の共同解決に向けて力を結集することができませんでした。それどころか、世界は益々閉ざされ、多次元的な危機に陥ってしまったのです。

危機的状態の現れの一つとして、ロシアや中国の様な強い影響力を有する大国の重要な利益を、複数の西側先進国がより一層公然と排除しようとする動きが見られます。国連憲章の中に、諸国間の友好関係や紛争の平和的解決の原則が明記されているにも拘わらず、国際舞台で我々に対して繰り広げられる社会的・経済的発展の抑制と敵対行為は、現実として組織的な性格を帯びています。

その様な政策は、所謂「ルールに基づく秩序」(国際法に裏付けられた秩序ではない)という、合意無しの有害な手法を国際政治の循環に根付かせようとする試みと同様、失敗する運命にあると私たちは確信しています。しかし、それを認識するまでには時間を要します。これは、今後世界が長期に渡る不安定な時期を迎えるということを意味します。

しかし、危機とは災難であるばかりではなく、新たな可能性の時代とも言えます。誠実で開かれた国際対話を構築することにより、状況の改善に着手する必要があります。G20、BRICS、上海協力機構、ユーラシア経済連合、そして独立国家共同体など、平等・協力・合意の原則に基づき機能する現行の交流形態の強化が必要不可欠です。将来的には、新たな課題へ柔軟且つ協力的に対応することのできる体制が生まれるものと確信しています。

地域統合は、現代社会の発展におけるもう一つの安定したトレンドです。この点、ユーラシア大陸も例外ではありません。むしろユーラシアこそが、世界の安定維持において中核的な重要性を持つ地域なのです。

様々な連合体に加わることはロシアの主要な優先事項です。この立場は、基礎的な公式文書、特にロシア連邦対外政策コンセプト(外交青書)で明確化されています。この様なアプローチは、現代の連合体間交流の重要性の理解と、国家発展の共通空間としてのユーラシア地域に対する私たちの価値観を同時に反映しています。

旧ソ連地域で運営されている連合体は時の試練を乗り越えてきました。独立国家共同体(CIS)は、その創立と集団安全保障条約の調印から四半世紀以上が経過しました。今日のCISは、旧ソ連地域における最大の連合体であり、多面的な国家間協力と積極的な政治対話の発展を目指す普遍的なプラットフォームで在り続けています。集団安全保障条約(CSTO)は、軍事的・政治的安定性を維持する上で重要な役割を担い、国際テロ、国境を越えた違法薬物取引、そして不法問題の様な課題や脅威に対処する上で大きなポテンシャルを秘めています。

現在最も新しい連合体は、ユーラシア経済連合(EAEU)です。まだ日が浅いながらも、これは既に成熟した強固な政府間組織であり、相当な数の国や経済関係機関がその動きを注視し、関心を示しています。世界経済の混乱が続いているにも拘わらず、EAEUの働きにより体系的な地域統合が保障され、超国家的法令が発達し、単一市場は総じて円滑に機能しています。

CIS加盟国は、お互いに投資・技術革新・労働力の源泉であることに変わりありません。これは経済成長の要因であり、世界市場における貴重な競争優位性です。自然、技術、知性やその他あらゆる可能性の結合、産業協力、運輸通信網の共同利用、そして市場統合は、ロシアとその近隣諸国が近代化における諸問題をより良く解決し、新たな課題に対する答えを追及する上で支えとなります。

ロシアは地域統合のパートナー達に提案すべきものを有しています。具体的には、あらゆる危機を乗り越えた独自の経験・マクロ経済の安定性・多種多様な経済プロジェクトの実現に向けた幅広い可能性などです。我が国は国際社会の安定の保証人として、また、地域的危機や国際問題を解決する仲介役としての役割を担い続けています。

今日において非常に将来性のある分野は、バイオセキュリティです。我が国はパンデミック中に、高水準の医療システムと疫学的脅威の撃退に向けた即応力を誇示しました。私たちには、ロシア製新型コロナウイルスワクチンを含む様々な製品をパートナー諸国と共有する体制が整っています。

このような協力の在り方はBRICSの例においても見受けられます。2015年のウファ宣言にて、伝染病と闘い、健康問題の解決に共同で貢献するという加盟国の政治的コミットメントが定められました。2018年のヨハネスブルクサミットでは、ワクチンの研究開発を目的とする共同センターの設立が合意されました。現在ロシアが議長国を務める中で、今年11月に実施されるBRICS保健相会合では、加盟国における感染症の大規模発生リスクに対する早期警戒システム構築の承認が計画されています。BRICSでは、コロナウイルス拡大に対処する最先端手法のレビューも予定されています。ロシアはパートナー諸国に、ロシア製ワクチン「スプートニクV」の導入協力を提案しました。

ユーラシアに話を戻しましょう。この地域における連合体の成長ビジョンは極めて広大です。ユーラシア地域では、新たな協力体制構築のプロセスが展開しています。ロシアは、大ユーラシア・パートナーシップ(GEP)という開放型統合基盤の形成を支持しています。この構想はロシア大統領ウラジーミル・プーチン氏が2015年12月に提唱しました。開放性・透明性・全ての国の利益尊重の原則に基づき、ユーラシア国民の平和・安全・成長・繁栄の為に協調して発展する地域機関ネットワーク・統合戦略・大陸横断型プロジェクトの創出が議論されています。

GEPのコンセプトは、ユーラシア経済連合(EAEU)、上海協力機構(SCO)、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国に加え、将来的には他のアジア、ヨーロッパの国々による、平等・相互尊重・互いの国益配慮の原則に沿った二国間あるいは多国間協力の構築を見込んでいます。

こうした協力関係を進展させる上で、各国の経済へ実利をもたらし、交通網を強化し、新たな「成長点」を生み出し、そして国民の生活水準を向上させることのできる互恵的な共同事業の実現に重点が置かれています。

現在、私たちの地域統合の努力と、中国のイニシアチブ「一帯一路」の接続に向けた動きが進行中です。両イニシアチブは、同時並行且つ協調的に発展していくことでしょう。

我々は、中国との関係を深化させるのと同時に、インド、日本、韓国、モンゴル、ASEAN諸国、そしてイランなどの様々な国とも幅広い協力関係を構築していきます。2016年にソチで開催されたロシア・ASEAN首脳会議では、「ASEAN10」がGEPへの支持を表明しました。将来的に、EUの友好国ともお互いに有益な協力関係を構築できれば良いと思います。

大ユーラシアパートナーシップは、異なる国々の成長モデルに対する相互尊重を基礎とし、自由且つ柔軟であり、他の多国間連合体との接続・調和という新しい価値を「統合関係の統合」という原則に従い提供するべきです。また、積年の問題の解決と新規課題への早期対応に向けた新たな可能性も開拓せねばなりません。

ここで私の発表を終わりたいと思います。本日の議論が、ユーラシア大陸における国家間協力関係の成長分析に大きく貢献し、その将来像に対する理解を深めるよう願っています。

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