米国の対イスラエル方針については、トランプ政権時代に決定された在イスラエル大使館のエルサレム移転は撤回していないものの、ネタニヤフ政権と距離を取り、パレスチナへの経済支援を再開している状況である。5月9日以降、パレスチナとイスラエルの衝突が悪化した際に、米国はイスラエルの支持を表明したが、政府としての対応は緩慢としたものであり、米国家安全保障担当補佐官とイスラエルによる会談の実施が報告されたのは5月11日であった。バイデンが電話会談でネタニヤフ大統領へ支持の意向を伝えたのは更にその翌日である。

もう一つの米国の重要な歩みは、トランプ政権時代に開始されたアフガニスタンからの米軍撤退の継続である。2021年1月までに、アフガニスタン駐留米軍は2500名までに削減され、部隊の完全撤退は5月1日までに実施される計画であった。大多数の専門家から米軍撤退への批判が生じたにも拘わらず、バイデン政権は撤退期限を2021年9月までに延長したものの、撤退継続を決定した。

サウジアラビアとの関係を冷え込ませ、パレスチナ・イスラエル間の衝突に対する立場を軟化させ、アフガニスタン駐留米軍を撤退するといった施策の各々が、バイデン政権のイデオロギーを推進し、自由世界のリーダーというバイデン像を生み出すのに格好の機会となり得ただろう。しかし、これらの政策決定のいずれも社会の反響を呼ぶに至らず、宣伝活動の対象にもならなかった。それだけでなく、これらいずれの場合においても、バイデン政権はトランプ政権の流れを完全に継承することに消極的であったが、だからと言って中身の伴う代替案や質的に異なるアプローチを提示することもなかった点を指摘する必要がある。

まとめ

ジョー・バイデンという新たな米国の指導者が推進した上述の施策及び決定の事例は、網羅的ではないものの、バイデン政権の特徴やオバマ・トランプ前政権との相違点と類似点を最も端的に示していると考えられる。

By KokusaiSeikatsu

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