オレーグ・カルポビッチ ロシア外務省附属外交アカデミー 現代国際問題研究所 所長

ニキータ・トレチャコフ ロシア政治学会 エキスパート

(翻訳:青林桂)

ジョー・バイデンが第46代米大統領に就任してから5か月が経過した。この間、米国は様々な内政・外交課題に直面し、政府は都度迅速な対処を余儀なくされた。こうした課題に対するバイデン政権の反応は、さらにオバマ政権やトランプ政権が講じた対策と比較することにより、米国の新指導者の行動特徴を分析する上で豊富な手掛かりを与えてくれる。

各種の危機的状況に対するバイデン政権の対応を具体的に検討する前に、ホワイトハウスの新たな主人であるバイデンの行動を評価し今後の予測をする上で、矛盾なく成立し得る二つの仮説を基礎としていることをここに注記しておく。一つ目は、米新政権はその政策内容やレトリックという意味でオバマ路線を継承していくだろうという仮説であり、二つ目は、バイデン政権の政策の全てが、イデオロギー的にも実務的にもトランプの政策と根本的に相反するものになるだろうという仮説である。バイデン政権の分析は、二つの前政権の政策と比較する中でこそ行うべきと考えるが、その為にはまず各政権の特徴を区別することが必要である。

バラク・オバマ政権(2009年~2016年)

バラク・オバマ政権の8年間は、主要金融機関への資本注入による2008年金融危機の解決、同性婚の合法化、そして医療保健への加入を義務付ける医療保健制度改革など、現代米国社会にとって非常に画期的な政策が強く記憶されている。外交分野においては、「アラブの春」の渦中にあるアラブ諸国の政権打倒を積極的に支持し、対リビア軍事作戦に参加し、また西側諸国とロシアの対立が新たな段階に突入した際には、西側陣営の主導的立場を担った。なお、この対立はすぐさま経済制裁の応酬へと発展している。米外交におけるオバマの功績としては、イラン核合意として知られる「包括的共同行動計画(JCPOA)」の締結、環太平洋パートナーシップ協定への署名と拡大交渉への参加、そしてパリ協定の採択などが挙げられる。

また、オバマ政権下の米国は、イラクからの米軍撤退の公約を履行しなかったばかりか、多国籍軍を主導しシリアにおける軍事作戦を開始することで、中東における軍事的プレゼンスを強化した。これらの行動は全て、主権国家の内政に事実上干渉した米政府当局の厳しい声明や、バラク・オバマ自らによる西側メディアの代表者との緊密な接触を伴っていた。オバマはメディアの力を利用することで、国内外のあらゆる政治改革の求心力且つ指導者であり、民主主義と人権の完全なる擁護者としての自身の大統領像を、国民の集合意識に植え付けたのである。

以上を踏まえ、オバマ政権の特徴を次のように示すことができるであろう。

  • 内政においては社会改革に注力
  • 経済政策においてはネオリベラルなアプローチ
  • イデオロギー的動機に基づいた遠隔地への国益拡大
  • 目標達成の為には軍事力の行使も可能とするスタンス
  • リーダーシップに中心的価値を置く
  • 広範な同盟体制を構築する傾向

ドナルド・トランプ政権(2017年~2020年)

世界規模で発生した、一種の天災とも言えるコロナウイルスパンデミックは例外として、トランプ政権の4年間は、米国の内政・外交いずれにおいても政策的に十分な一貫性があったと言えよう。内政面では、法人税率の引下げと企業の行政手続きの負担削減などに向けた改革や、移民規制措置の強化及びメキシコ国境沿いにおける大規模な壁の建設、軍事費の増額、そして法執行機関への全面支援などがトランプ政権の代表的な実績である。

By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。