ヨーロッパとは異なり、東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国は、ミャンマーにおける政権交代に対し、予想通り、穏やかな反応を見せた。シンガポール外務省は、深刻な懸念を示した。インドネシアは各方面に対し、現在の法的メカニズムを利用して、対立を解決するよう呼びかけた。マレーシアは、ネピドーはまず第一に、国内の平和と安全、法の支配を保障する必要があるとの見解を示した。一方、フィリピン、タイ、カンボジアは、一連の出来事を、ミャンマーの「内政問題」であると位置づけている。韓国と日本も、ミャンマーでの出来事に対して比較的ソフトな立場を取っている。東京は、圧力をかけることがネピドーと北京の結束を強めるだけだ、と考えている。

ロシアは、中国同様、ミャンマーで起こった出来事を、この国の内政問題として捉えている。国連安全保障理事会において、ヨーロッパの列強がミャンマー軍部の行動を批判する決議を採択しようとしたのに対し、ロシアと中国の代表は、きっぱりとこれを退けた。

ミャンマーが現在の危機を乗り切ることが出来ると考えるための根拠が揃っている。国の経済状況は、COVID-19のパンデミック以前は非常に好調で、GDPの成長率は6%を超え、8%に届こうとしていた[3]。現在、軍部にとって極めて重要なのが、これまでに取られてきたあらゆる経済的自由を維持することであるが、ミン・アウン・フライン上級大将には、問題を解決することができる人物、との評がある。彼によって組織された新政府のメンバーの大半が、各分野で十分な経験を持つ文民である。最高裁判所の裁判官全員と、ミャンマー汚職防止委員会のメンバーは、自らのポストに復帰した。経済制裁に関して言えば、アメリカとヨーロッパの企業はミャンマーでこれといった活動を行っておらず、主な投資国は中国とシンガポールである。個別の制裁もまた、ミャンマーの将校らに大きな動揺を与えておらず、おそらく彼らの活動に影響を与えることはないだろう。

ミャンマー・スパイラルに新たな急展開を期待することはできるのだろうか。そして、軍部が約束した通り、ネピドーに民政が戻ってくるのだろうか。時が来れば、明らかになるだろう。一つはっきりしているのは、民主制は貧困と同居することはできないということである。アジアの他の国々の経験が証明している通り、国家の権威主義的な統治システムから民主主義的システムへの移行は、力強い経済成長に立脚した場合にのみ可能であり、経済成長を成しえることができるのは、一部の権利を制限しながらも、強固な政権を保障する国家に限られる。中国を例にしてみよう。もしも、1989年に当時の中国の指導部が、天安門広場から始まったデモ参加者の要求を受け入れていたとしたら、現在、中国大陸には、確信を持って将来を見つめる国民が暮らす、強力な大国が存在していただろうか?その代わりに、20~30の貧しい国家が互いにいがみ合い、その一部が核兵器を保持している、ということになっていただろう。韓国や特に民政度合いが高いシンガポールを見てみても、十分に強力な政権という条件下でこそ「アジアの虎」に成長することができたのである。


[3]https://ru.tradingeconomics.com/myanmar/gdp-growth-annual

By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。