第二次世界大戦終戦75周年を目前に控えた2020年、バルト諸国は、1939年から1945年の歴史的出来事に関する独自の説を押し出そうとする国家的努力を活発化させた。その特徴的なものの一つとなったのが、エストニア、ラトビアおよびリトアニアの政策が、以前のように、歴史的事実の記述や解釈に注力する代わりに、「歴史のスターリン的説明」を支持するロシアを非難することに集中している、という点である。2020年1月16日、ラトビアのサエイマ(議会)は、第二次世界大戦史への見方に関して、ロシアへの批判を込めた決議を採択した。文書の作成者は、ロシアに対し、ソ連の継承国として「占領と、ラトビアの違法併合の事実を認める」よう訴え、また、国際社会に対しては、「ロシアの官僚による、第二次世界大戦史の再検討の試みを批判的に評価する」よう訴えた。

2020年2月19日、これと同様の決議が、エストニア議会で採決にかけられた。その中では、「近年ロシアが、第二次世界大戦開戦の首謀者であるとしている」ポーランドや、その他のヨーロッパ諸国に対する支持が明記された。文書では、ロシアが、「第二次世界大戦の主たる原因のうちの一つとしてのソ連の役割を否定し、歴史を書き換え」ようとしている、と指摘された。2020年4月7日、ラトビアのサエイマは、欧州議会と中東欧諸国の国会に対し、「ロシア連邦によって行われている歴史修正主義と、ロシアによって拡散されているデマ情報に共に抵抗を表明しよう」と呼びかける決議を採択した。

戦勝記念日の前日である2020年5月7日、エストニア、ラトビア、リトアニアおよびウクライナの外相は、ドイツ紙«Frankfurter Allgemeine Zeitung»に、ロシアの「歴史操作」を非難する記事を寄稿した。記事はドイツ語で書かれ、ドイツ連邦共和国の大手新聞に掲載されていることから、バルト諸国と、そこに合流したウクライナがターゲットとする読者は、ヨーロッパ人、とくにドイツ人であろうと予想される。外相らによるこの記事に続き、エストニア、ラトビアとリトアニア大統領の特別声明が出された。この中で三か国の大統領は、第二次世界大戦後、バルト諸国は、自由を獲得したのではなく、自由を失ったのだ、と主張した。つまり、バルト諸国がソ連の構成国となった際、一つの全体主義体制に代わり、別の全体主義体制がやって来た、というわけである。文書では、ロシアが「歴史を捏造し、現代の国際社会の法秩序の基盤をあいまいなものに」しようとしている、とのテーゼが改めて示された。

第二次世界大戦開戦と、「ソ連の占領」に関するロシアの「責任」に関するナラティブの格上げの新たな試みの一つとなっているのが、国連のプラットフォームの活用である。国連安全保障理事会の非常任理事国(2020年から2021年まで)であるエストニアは、2020年5月8日、第二次世界大戦終戦75周年に合わせた、国連の歴史上で最大規模のビデオ会議を主催した。80か国の代表が会議に参加したが、そのうちの大半は、各国の外相であった。

ディスカッションのモデレーターを務めたエストニアのY.レインサル外相は、第二次世界大戦後、「多くのヨーロッパ人は、ソ連に直接抑圧され、自由や主権、尊厳、人権保護や自由な発展もない状態に置かれた」と指摘し、「歴史的事実の操作と、モロトフ=リッベントロップ協定の正当化の試みにおいて」ロシアを非難した。ラトビアのE.リンケービッチ外相は、国連が創始された1945年、ラトビアは「再びソ連に占領され」、そのため、国連の創始国に名を連ねることができなかった、と発言した。そして彼は、1991年に独立を回復して初めて、ラトビアは終戦を迎えたのだと付け加えた。リトアニアのL.リンケヴィチウス外相は、終戦後、リトアニアとその他の中東欧諸国の国民は、「ソ連の抑圧と国外追放の犠牲者となり、精神的苦痛にさらされ、法的手続きを踏まずに処刑された」と言及した。リンケヴィチウス外相の発言によれば、「30万人あまりのリトアニア人が国外に追放されたり、流刑に処されたり、あるいはソ連のグラグに収容され」、数万人の「平和のための戦士」が、「ソ連の占領」に抵抗しながら森の中で命を落としたのだという。

By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。