上海協力機構20周年ドゥシャンベ宣言には、「SCO加盟国は、国際法に則り国益を考慮した上で、広く開かれた互恵的且つ平等な協力に向けた空間をユーラシアに形成する為に、地域の国々・国際機関・多国間連合の潜在力を利用することが重要であると考えている。これに関連して、加盟国は、SCO、ユーラシア経済連合、ASEAN、その他関心を持つ国や多国間連合が参加する大ユーラシアパートナーシップを構築するという構想に言及した。」と述べられている。15

インドは、2020年9月のSCO外相会合の場で、ジャイシャンカル外相を通じ大ユーラシアパートナーシップ構想の支持を表明した。モンゴルも大ユーラシアパートナーシップの形成を支持しており、EAEUとの協力拡大、自国の国家戦略である「草原の道」と一帯一路の連携、そして、ロシア・モンゴル・中国の経済回廊の構築に向けた方針を公表した。

EAEUにとって、大ユーラシアを構築するという理念は、EAEUが将来の世界経済構造において正しい位置を占め、ユーラシア空間全体の経済成長の原動力になることを可能とする、まさにメガリージョナルな戦略である。大ユーラシアパートナーシップ構想の枠組内で、ユーラシア空間における統合プロセスを連携させるという課題は、2020年12月11日付けのユーラシア経済最高評議会決定第12号で承認された「2025年までのユーラシア経済統合の発展の為の戦略的方向性」で規定されている(パラグラフ11.8)。EAEU加盟国は、「中国の『一帯一路構想』との連携、SCOやASEANとの協力強化、EU及び他の多国間連合やアジア・ヨーロッパの国家との対話の確立などにより、EAEUが大ユーラシアパートナーシップの統合輪郭の中心の一つとして位置づけられることを目指している。」(パラグラフ11.8.1)

EAEUと一帯一路の連携は、徐々に実践に移されている。2018年5月に、一方ではEAEUとその加盟国、他方では中国との間で貿易・経済協力に関する協定が締結されたことで、連携に向けた取組みの為の恒常的なプラットフォームを設置することが可能となった。その役割を担うのが共同委員会であり、2020年10月に第一回会合が実施され、現在第二回目に向けた準備が行われている。16

2021年9月2~4日にかけて成功裏に実施された第六回東方経済フォーラムでは、大ユーラシアに対する関心の高まりが顕著に表れた。このフォーラムは、我々の大陸の将来について十分な「思考の糧」を提供してくれた。

フォーラムの総会には、この重要なテーマに関して論じようというユーラシア諸国の指導者らの機運が満ちていた。その雰囲気は、インドのモディ首相が用いた融合や結束という意味の「サンガム」という言葉が最も端的に表していた。カザフスタンのトカエフ大統領は、「ユーラシアは我々の共通の家である。ユーラシア諸国は、調和の取れた共同体コミュニティになることができるだろう」と述べた。

広大な大陸間協力を構築するという理念は、専門家コミュニティでも活発に議論された。国際政治学会では恐らく初めて、「大ユーラシアパートナーシップの価値と価値観」をテーマにした特別パネルディスカッションでこの理念が論じられ、豪華なメンバーが参加した。

ユーラシア経済会議アカデミーの統合・マクロ経済研究会のアカデミー会員であるセルゲイ・グラジエフは、現在進行中の新たな技術パラダイムへの移行と、共同発展の手段や、国や統合連合の優位性を連携させるメカニズムなどといった新たな協力形態の模索を結び付けているが、これは根本的に重要な思想である。まさにこの文脈の中に大ユーラシアパートナーシップが存在しており、グラジエフは、その核となるのがEAEUであると考えている。彼は、本パートナーシップの課題を次のようにまとめている。

  • ユーラシアの輸送・情報・エネルギーインフラの枠組の構築
  • 公正な貿易・投資な条件の確保
  • 全ユーラシア経済空間におけるマクロ経済の安定化
  • 各国通貨による決済への移行
  • 共通の開発機構の形成
  • 安定的な価格設定が可能な共通の交易空間の形成
  • 共通の規格と共通の技術規制システムの構築

ロシア戦略研究所所長のミハイル・フラトコフは、スピーチの中で行動プログラム全体の概要を説明した。本プログラムに含まれるのは次の項目である。

  • 輸送とインフラ分野での協力における優先順位の確立(国際輸送回廊の統一データベースの構築、関税政策と越境貨物要件の調整、高速鉄道輸送の開発、南北国際輸送回廊の有効活用など)
  • 電力分野での協力強化(「アジア・エネルギーリング」の構築を始めとした、地域にとって有意義な大規模事業の実施を含む)
  • クレジットや負債金融の誘致に関し、共同で制定した基準及びルールに基づく、「グリーン」プロジェクトの実現に向けた責任投資への移行
  • ユーラシア投資コンサルタントセンターの構築と投資紛争解決メカニズムの創、独立したユーラシア評価機関の設立

フラトコフは、新型コロナウイルスパンデミックは、感染症の抑止と防止に向けた特殊機関であるユーラシア医学研究所の設置が望まれる状況を生み出したと見ている。このことは、緊急医療用品・医療器具・個人防護具・業務支援などの緊急供給の為の所謂「グリーン回廊」をユーラシア地域に開設することを促した。

フラトコフは、大ユーラシアパートナーシップの形成について、確かに時間を要するプロセスであり、数段階の成長過程を得て、単純な形態からより複雑性を持った姿に進化しなければならないと考えている。しかし、このパートナーシップの優位性は、オープンであり、ダブル・スタンダードを認めず、正当な権利・価値・開発目的を尊重した上での互恵的な協力関係に参加する可能性を持つ国々を重視しているという点である。大ユーラシアパートナーシップは、新たな環境下で国が経済と社会の発展実現に成功することを促すような、より公平な地域秩序への期待を反映しているのである。

極東研究所所長のアレクセイ・マスロフは、その講演の中で、大ユーラシアパートナーシップの形成に向けた努力は、交通網の構築と維持整備による相互の結び付きを強化することの他に、いくつかの新たな方向性に注がれていると述べた。それは、二国間並びに多国間協定に基づき機能する、広域且つ高度に専門家された、「分散型」経済特区ネットワークの構築や、デジタル経済分野での革新的協力の開発(特に統一データベースの構築と維持)や、人道協力(「大ユーラシアは頭の中で形成される」)などである。

By KokusaiSeikatsu

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