SCO事務総長ウラジーミル・ノロフは、平等の原則に基づきユーラシア地域の全ての国家の利益を考慮し、ユーラシア空間内の多様な統合イニシアチブ間の非生産的な競争を回避し得るような、地域組織の協力ネットワーク創出に向けた新たなアプローチを形成する為に、EAEU、SCO、ASEANの加盟国との協議を開始すべきとの極めて重要な提言を行った。彼はまた、「大ユーラシアパートナーシップの構想パラダイムを更に発展させる」ことの必要性に言及している。ノロフは、ユーラシアの持続的な平和・安定・繁栄を達成する上で、ユーラシア大陸の様々な地域間の政治・安全保障分野での協力と、経済的・人道的繋がりの拡大が基礎とされねばならないと考えている。

特筆すべきなのは、議論の参加者の大半が、大ユーラシアパートナーシップの確固たる基盤となるものは、太古の昔からユーラシアの民に固有の基本原則、道徳的・人道的態度、そして人生の価値観の共鳴であるとの意見に一致したことである。それはつまり、国家主権の相互尊重、互恵の原則、信頼と開放性、競争優位性の結合、協力の相乗効果の追及(セルゲイ・グラジエフ)、国家の存続、共通の脅威認識、伝統的家族、友情の崇拝、労働と教育の尊重、そして野生生物への親近感と思いやりの心である(アレクセイ・マスロフ)。

以上の事柄に関して、ユーラシア諸国の経済界はどのように考えているのだろうか。専門家コミュニティが発信するような「統合の楽観主義」という性格を帯びているのだろうか。

欧州人の会議参加者である在ロシア欧州ビジネス協会代表のタジオ・シリングと、ノルウェー南東部大学経営学部教授のグレン・ディーセンは、大ユーラシアパートナーシップの形成は、アジアにとって有益であるのみならず、ユーラシア空間に便利な輸送・エネルギーインフラや、貿易・経済協力の為の有利な条件、そして透明性のある「ゲームルール」を構築することに客観的な関心を抱いている欧州にとっても好ましいことであると指摘した。大ユーラシア・パートナーシップは、単一あるいは複数の「プレーヤー」による支配の恐れから解放された、地域協力の新たなモデルとなり得る。

こうした考えを裏付けるように、「ロスコングレス」基金は東方経済フォーラムの中で、「大ユーラシアにおける経済協力宣言」という興味深いコンセプトペーパーの発表を行っている。同文書は、リスボンからウラジオストク、上海、ジャカルタ、チェンナイを横断する企業の結束を求めるものである。文書の筆者らは、ユーラシア諸国のビジネスコミュニティの代表者たちに対し、誰もが認める数々の声明や意向への賛同を呼びかけた。

  • 商品・サービス・資本・ヒトの自由な動きが可能な共通の経済空間の形成と、非関税障壁や製品・サービス認証撤廃の推進
  • ユーラシア空間における近代的な輸送・エネルギーインフラ開発への参画と、新たなバリューチェーン及び輸送網に沿った経済回廊の形成促進
  • 共通のデジタル空間の構築に向けた尽力
  • ユーラシア諸国の実業界内における持続可能な直接的繋がりの確立と対話の促進
  • 共同ビジネス・フォーラム、セミナー、カンファレンス、展示会、フェア等の開催を含む、各国のビジネス従事者間の情報交換と交流の拡大促進
  • 大ユーラシアパートナーシップの活動の基礎となる、ビジネス活動組織の動向予測及び中・長期プロジェクトの開発に向けた分析コミュニティ代表者間の協力17

実際に、大ユーラシアパートナーシップ構想の実現には、ビジネス界が協力プロセスへ効果的に関与することを確実なものとする必要がある。上述の宣言の中で提示されたアイデアは、大ユーラシア・ビジネス協会の設立に関する取組みの際に勘案することができる。この連合は、複合的で包括的な性格を持ち、実務的なプロジェクトの実現や、マクロ地域のビジネス界の利益を協調的に拡大する為に、政府機関との建設的な対話の構築を目指すであろう。

この様な多国間協会を設置する構想は、ロシア産業家企業家同盟(RSPP)のアレクサンドル・ショーヒン会長が、2020年2月の第一回ユーラシア総会で提唱した。同アイデアは既に広い反響を呼んでおり、数々の専門家コミュニティやビジネス界の支援を獲得している。この構想が提案されて以降、RSPPは新協会のコンセプトを策定し、大ユーラシア空間で事業を営む主要なビジネス団体や企業の中から参加者候補を募り、以下で述べるような議論を重ねてきた。

協会は、一方では、大ユーラシア諸国の権力機構の対話パートナーとなり、貿易・経済及び投資協力に係わる重要問題に関して、メガリージョンの企業としての確固たる立場を代表することができる。また他方では、メガリージョン内の国で事業を行う海外パートナーが、その国の当局との関係性を築く上での「入り口」として機能することも可能である。

この新たに提唱された組織の特筆すべき点は、その「包括的な」性格である。これは、大ユーラシア・マクロリージョンの各アクターが推進するばらばらな構想や協力形態を、実際的で包括的な協力を重視した共通の構想枠組みの中で統合することを意味している。協会参加者は、複数の国々のグリーン・インフラと潜在リソースを一挙に利用することができる。これは、メガリージョン内の様々な国で事業を営む多くの大企業に極めて重要な利益をもたらす。

当然ながら、今の段階では、協会の活動に関する具体的項目について述べるのは時期尚早であり、それらは協会設立後に明確化されるであろう。とは言え、現段階では次の3つの主要課題を提示することが可能だ。

By KokusaiSeikatsu

『国際生活』はロシア連邦外務省を発起人とする、国際政治、外交、国家安全保障の問題を取り扱う月刊誌です。創刊号は1922年、『外務人民委員部週報』として出版され、1954年に『国際生活』として、月刊誌として復刊しました。今日、ロシア国内だけでなく、世界各国においても幅広い読者を獲得しています。